1. ネタ名と芸人名
- ネタ名:「結婚の挨拶」
- コンビ名:アンタッチャブル
2. 役割構造
- 感情型ツッコミ × リアクター主導型ボケ
山崎は徹底して天然・暴走型のボケに徹し、柴田はそれに怒り・困惑を交えた感情的ツッコミで対抗。だが、柴田は単なるツッコミではなく、リアクションでも多く笑いを担っている点が特筆すべき点。
3. 型(構造・スタイル)
- ミッション完遂型 × 回収・伏線型
「結婚の挨拶を相手の親にする」という明確な目標(ミッション)に向かって、ボケが様々な手段で挑む構造。途中の「面白くない芸人です」「あまり動きません」などは伏線的な言葉遊びとして後半に回収される。
4. ネタスタイル
- 演技&空気重視型 × リズム系
柴田の怒涛のツッコミテンポと山崎の“無自覚かつ自信満々なズレ”の空気が絶妙なコントラスト。特に「お父さん」連呼や「お願いします」の繰り返しでリズムが形成される。
5. 構成要素の流れ
- ツカミ:「生きててよかった」「小太りでよかった」など軽妙な導入
- 展開:「友人の結婚」→「親への挨拶」→「得意だと豪語」→「自分の親」「電車移動」など逸脱
- クライマックス:「よし子さんをください」からの交渉崩壊
- オチ:「面白くない芸人」→「じゃあ結婚許して?」→「あざ~す」でポジティブに無理やり決着
- 回収:「お笑い芸人だから許せない」→「面白くない」でひねり
6. 笑いの源泉
- ズラし:話の筋(相手の親)から山崎が逸脱し続ける
- 例:「まず自分の親に言うのが筋でしょ?」
- 誇張:ポジティブ過剰な態度
- 例:「全然、面白くないんですよ」
- 構造遊び:「お願いします」→「頭を下げろ」→「面を上げい」など、土下座の形の逆転
- 感情の暴走:柴田のツッコミが怒りのピークを超えて演技的に
- 言葉遊び:「チョチョイのドン」「“あまり”動きません」など
7. キャラのタイプと関係性
- 山崎:異常にポジティブな妄想ボケ/キャラ主導型
- 柴田:理性で抑え込みながら感情が暴走するツッコミ
- 関係性:現実派(柴田)vs 妄想&無邪気派(山崎)。柴田の“怒っている”というより“振り回されながらも付き合ってる”感じに愛情がにじむ。
8. 演技・パフォーマンス面
- 山崎の声のトーンの緩急/無駄に誠実な目線/妙なポーズ
- 柴田の激しいツッコミのテンポ/言葉の勢い/細かい声の抑揚
- 特に「頭を下げろ!」→「面を上げい」のくだりは演技的熱量のピーク
9. 客観的コメント
このネタは、「結婚の挨拶」という誰もが想像できるテーマにおいて、“無限のズレ”を創出していくことで笑いを拡張している。山崎の妄想ボケは過剰に前向きかつズレていて、観客の予想を裏切り続ける。一方、柴田のツッコミは論理で説得するのではなく、怒鳴る・演じる・叫ぶという演技的アプローチで、笑いのリズムと熱量を維持している。極めて高密度な掛け合いで、技術と熱情が両立した稀有なスタイル。
10. 最終コメント
アンタッチャブルの「結婚の挨拶」は、一見よくあるシチュエーションの中に、狂気と情熱を織り交ぜた傑作である。山崎のボケは「まったく空気を読まないポジティブ馬鹿」に振り切られながらも、どこか憎めない愛嬌がある。そのボケを、柴田が全力の怒声と的確な指摘で捌きつつ、自らもパフォーマンスとして“巻き込まれていく”姿はまさに芸術的。特に「頭を下げろ」「面を上げい」の下りは、演技・構成ともに見事なピークである。全体として、単なる「暴走ボケ vs 追いツッコミ」ではなく、共犯的な芸としての完成度が光る。完成度の高さと笑いの振れ幅において、彼らのネタは、何度見ても発見がある「緻密なカオス」である。審査員の評価でも全てが95点以上と圧倒的な力で1stラウンド一位突破を決めた。
【書き起こし】
(柴田)よろしくお願いします。
(山崎)お願いします。うれしいね。
(柴田)うれしいですよ。
(山崎)生きててよかったね。
(柴田)生きててよかったです。そういうことですよ。
(山崎)小太りでよかった~。
(柴田)いやいや、それは関係ねえんだけど。いや、ちょっとね。これもうれしいんですけどね、最近ひとつうれしいニュースあったの。
(山崎)マジで? じゃああとで教えてよ。
(柴田)今聞けよ。なんでのっけから後回しだよ?
(山崎)M-1中だよ?
(柴田)そういうんじゃねえんだって。俺の友達がよ、この間、つい最近結婚したんだよ。
(山崎)そんなことないよ~。
(柴田)あるよ! なんでお前が友達の事実を全面否定すんだよ? いや、したんだよ。
(山崎)マジで? ありがたいね。
(柴田)ありがたいって…お前のためにしたわけじゃない。
(山崎)なになに? なになに?
(柴田)でね、要は相手の親に挨拶しに行かなきゃいけないじゃない。“娘さんをください”って。あれがやっぱ緊張したっつうのよ。
(山崎)ハハッ、簡単じゃない? そんなの。そんなのチョチョイのドンよ。
(柴田)チョチョイのチョイだよ。なんで最後、爆発音だよ。チョチョイのチョイだよ。
(山崎)そんなの簡単。実は僕ね、そういう相手の親に挨拶するのめちゃめちゃ得意なの。
(柴田)こういうのに得意とか不得意とかあんの?
(山崎)(東北弁の口調で)超得意なんだから~。
(柴田)なまってるじゃない。出だしでつまずいちゃったよ。
(山崎)お父さん。
(柴田)いや、やんなくていいって。
(山崎)お父さん、お父さん。
(柴田)やんなくていい。
(山崎)お父さん。
(柴田)何だ?
(山崎)今からよし子さんのお父さんに挨拶してきます。
(柴田)お前の親父じゃないか。相手の親のとこ見せろ。いや、行かなくていいっての。面白いポーズで行くな。相手の親に言うとこが得意なんだろ?
(山崎)まず自分の親に言うのが筋でしょ?
(柴田)筋はいいから言うとこ見せろよ。
(山崎)筋は通したいよ~。
(柴田)嫌な顔するねえ、嫌な顔するねえ。
(山崎)だから自分の親に伝えてから相手の家に向かうから。
(柴田)じゃあ、もう早く行ってやってくれ。ねえ、だから…電車で行くとかいいんだよ、そういうの。
(柴田)何で行くかはいいから。
(山崎)電車で行かしてよ。
(柴田)電車でもタクシーでも何でもいいんだよ、そんなの。
(山崎)タクシーはこっちかかんのよ~。
(柴田)関係ないから! 聞いてないから! 早く行くとこ見せて。
(山崎)分かった、着いた着いた。
(柴田)ああ、着いたの?
(山崎)プシュ~ッ、ねっ? で、こうやって…はい、キンコ~ン。
(柴田)なんで足りてねえんだよ。それぐらい覚えとけ。いくらかぐらいは。
(山崎)これがないんだって。
(柴田)ないじゃねえんだ。早くやるとこ見せて。
(山崎)とにかく逃げてきました。
(柴田)うん、なんで逃げてくんだ? ちゃんと事は済ませてこい。
(山崎)お父さん。
(柴田)そんなヤツに のっけから…
(山崎)お父さん。
(柴田)何だよ?
(山崎)よし子さんを僕にください! お願いします!
(柴田)はっきり言うぞ。お前に娘をやる気は、さらさらないよ。
(山崎)だけど?
(柴田)“だけど”とかねえよ! お前、なに人の気持ちつり上げてんだ。“だけど”じゃないんだよ! 俺、親父だぞ? 言っとくけど。なにが“だけど”だ。お前、だけどもクソもあるか!
(山崎)はいはい、すいません。
(柴田)“はい”じゃねえ。大体、俺はな、お笑い芸人に娘なんかやりたかないんだよ。
(山崎)確かに僕はお笑い芸人です。でもお父さん、安心してください。
(柴田)何だよ。
(山崎)全然、面白くないんですよ。
(柴田)困るよ、逆に! 仕事としろ、ちゃんと!
(山崎)ということは、もはやお笑い芸人ではありません。
(柴田)じゃあ何なんだお前は?
(山崎)だから、結婚を許していただけますよね?
(柴田)ああ?
(山崎)あざ~す!
(柴田)“あざ~す”じゃねえよ、おい! “あざ~す”じゃねえんだ! このポジティブ野郎!
(山崎)おざ~す、おざ~す。
(柴田)おはようございますって、今さら朝の挨拶すんなお前。帰れ! お前なんか用はねえ。
(山崎)帰りません。
(柴田)帰れ。
(山崎)お父さんが結婚を許してくれるまで…僕はここをあまり動きません。
(柴田)“あまり”って何だ? 何だ、その僅かに欲しい自由は。
(山崎)お願いします(動きながら)
(柴田)チョロチョロすんな お前は! とにかくお前には娘はやらないよ!
(山崎)なんで分かってくんないんですか?
(柴田)分かるか、そんなもん。
(山崎)僕はよし子さんを…愛してるんです。
(柴田)知らねえ、そんなこと。
(山崎)絶対幸せにしてみせますから。
(柴田)根拠がねえだろ、根拠が。
(山崎)じゃあ、もし幸せにできなかったときは…そのときは、すいません。
(柴田)すいませんかよ! すいませんで済む話か? こら!
(山崎)なんか、すいません。
(柴田)“なんか”じゃねえ。雰囲気で謝るな! 雰囲気で謝ってんじゃねえや!
(山崎)お願いします、お父さん。このとおりです(膝立ちで、顔を上げて)
(柴田)そんなことしてもダメだよ。
(山崎)お願いします、お父さん(膝立ちで、顔を上げて)
(柴田)ダメだ。
(山崎)お願いします(膝立ちで、顔を上げて)
(柴田)頭下げろ! 頭を下げろ! ここに付けんかい! 土下座ってこうすんだよ!
(山崎)まあまあ… 面(おもて)を上げい。
(柴田)“上げい”じゃねえ! お前のためにやっとんじゃい! お前が分かんないからやってんだよ! ここは汚れてない、ここだ汚れたのは! 変な気遣いすんなお前!
(山崎)すいません…
(柴田)とにかくな、お前に娘なんか絶対やらないからな!
(山崎)しかし?
(柴田)“しかし”とかねえよ! いいかげんにしろ!
