【M-1グランプリ2002】フットボールアワー『結婚披露宴の司会』分析/書き起こし

1. ネタ名と芸人名

  • ネタ名:結婚披露宴の司会
  • 芸人名:フットボールアワー(後藤輝基・岩尾望)

2. 役割構造(コンビ内の機能分担)

  • ツッコミ主導型 × キャラ型ボケ
    • 後藤は典型的な「情報整理型」のツッコミで、現実的でロジカルなツッコミを連発。
    • 岩尾は「キャラ型ボケ」+「ワールド構築型」の併合で、現実離れした奇妙な世界観を滑らかに展開。
    • ボケが暴走し、ツッコミがその世界を引き戻すという構造が明確。

3. 型(構造・スタイル)

  • ワールド構築型 × テーマ追求型 × 構造破壊型
    • 「披露宴の司会」というシンプルな設定の中で、司会進行がどんどん異常化していく。
    • 岩尾が披露宴の常識を破壊しつつ新しいワールドを構築(トラック入場、青森出身の架空の妻など)。
    • 最終的には司会者がMっ気を出したり、ケーキを「購入」したりと、設定自体が破綻寸前になる構造破壊系の暴走も含む。

4. ネタスタイル(演技・テンポ・空気)

  • ナチュラル会話型 × 演技&空気重視型
    • 会話のテンポはナチュラルだが、芝居の比重が非常に高く、特に岩尾の声色・トーン・演技が重要。
    • 後藤の的確なツッコミが現実とのギャップを明確化し、ボケの異常さを際立たせる。

5. 構成要素の流れ

  • ツカミ:「結婚したい」「司会やったろ」の導入で笑いを作りつつ、シチュエーションをセット。
  • 展開:岩尾の“披露宴司会”が次第におかしな方向に進行(学級会風→トラック入場→青森設定→ラ行ラップ)。
  • クライマックス:岩尾がMっ気を出し、「もっと強く言ってください!」の狂気。
  • オチ:「ケーキ…購入!」の肩透かし+後藤の「もうええわ!」で王道の締め。
  • 回収:全体的にテーマは披露宴に一貫しており、「ケーキ入刀→購入」など言葉遊び的な回収も効いている。

6. 笑いの源泉

  • ズラし:「文金高島田→司会が被る」「ケーキ入刀→購入」など定番の意味や流れの逸脱。
  • 誇張:「青森小→青森鉄鋼」までの情報の不自然な統一感。
  • 構造遊び:「なれそめ→女の子襲われ→岩尾がタエコ」など物語内の逆転。
  • 言葉遊び:「お色直し→裾直し」「まち針入刀」など音の転換によるズラし。
  • 感情の暴走:「司会者、発情〜!」の狂気。

7. キャラのタイプと関係性

  • 後藤:冷静で理知的なツッコミ。状況説明力が高く、観客を置いていかないバランス型。
  • 岩尾:突飛なイメージと不思議な演技を駆使するファンタジー構築型ボケ。裏の主導者とも言える。
  • 二人の関係性は「現実 vs 妄想」、「理性 vs カオス」として対比的で、その緊張感が笑いを生む。

8. 演技・パフォーマンス面

  • 岩尾の「巻き舌」「ラルフローレン」など細部の発声が非常に印象的。
  • 「プーッ プーッ」など効果音の演技も豊富。
  • 後藤のツッコミは間とリズムが正確で、観客の代弁として機能。

9. 最終的コメント

  • 岩尾の異常性が段階的にエスカレートすることで、観客も「次は何が起きるか」を期待する。
  • 披露宴という“固いフォーマル空間”を舞台にしているため、その崩壊が余計に可笑しさを生む。

10. 最終コメント

結婚披露宴というフォーマルな場を借りて、常識を破壊するボケの連続が畳み掛けられる本作。岩尾は異常な設定を涼しい顔で積み上げ、後藤が現実的な視点でそれを捌く構図は秀逸。学級会風の司会に始まり、搬入トラックでの入場、巻き舌プロフィール、果ては司会者のM化まで、すべてが「ありえなさ」の加速でありながら一貫して笑いのラインを逸脱しないのは、二人の呼吸と技術あってこそ。特に後藤の冷静なツッコミは観客の視点を代弁し、岩尾の狂気をリアルに引き戻す役割を果たす。後半にかけてボケの速度と密度が一気に高まり、観客の想像を超える畳み掛けが炸裂する様は圧巻。優勝こそ逃したものの、記憶に残る強烈なインパクトと、実力の高さを証明した一作と言える。世界観の暴走とツッコミの制御が絶妙なバランスで共存した、フットボールアワーらしい濃密な一本。


【書き起こし】

後藤
はいどうも!というわけでね、改めましてフットボールアワーです。よろしくお願いします。
僕、最近思うことがありましてね。

岩尾
何ですか?

後藤
最近ね、結婚したいなぁと思ってね。

岩尾
ああ、そう。

後藤
ええ。もう早く結婚してね、盛大に披露宴を挙げたいなと思ってね。

岩尾
ああ、いいね。じゃあ君が披露宴する時は、僕がその披露宴の司会やったげよう。

後藤
できるか?お前。いや、披露宴の司会ってものすごい難しいねんで?

岩尾
やったろ!

後藤
ホンマか?お前、できる?

岩尾
やったろ!

後藤
ホンマかい。

岩尾
文金高島田、付けてやったろ。

後藤
お前が付けたらアカンねん。

岩尾
ほな、取ろう!

後藤
いや、取れよ!お前が付けたらややこしなるから。任しといて。
ほんならここが俺の結婚披露宴の会場やと思うて、ちょっと司会やってみてくれ。頼むで。

岩尾
今から~ 後藤君と~ タエコさんの~

後藤
待て待て待て、お前。学級会みたいになっとるやないか。学級委員長決めてんのちゃうで。

岩尾
ああああ…。

後藤
披露宴、分かる?

岩尾
厳かに。

後藤
厳かに。

岩尾
え~、それではいよいよ新郎新婦、入場でございます。
♪ パパパパーン パパパパーン パーン ♪
さあ新郎新婦、従業員入り口より出てまいりました。

後藤
どっから出てきてんねんお前。

岩尾
搬入トラックに乗っての入場でございます。

後藤
なんで荷台乗ってこなあかんの。

岩尾
プーッ プーッ プーッ、結婚します。

後藤
バックしますや。

岩尾
プーッ プーッ プーッ。

後藤
ちょっと待てよお前、なんやねんそれ。

岩尾
それではここで、新郎・後藤輝基のこれまでの経歴を簡単にご紹介いたしましょう。

後藤
僕の生い立ちをね。頼むで。

岩尾
そこそこの28年。

後藤
短い!ちょっと待てよお前。

岩尾
新婦…。

後藤
新婦やあるかお前。短かすぎるやろそれは。

岩尾
時間がございませんので、新婦のほうに。

後藤
いや、短いなそれ。

岩尾
それでは新婦のタエコさん、タエコさんの経歴を巻き舌でご紹介いたします。
大阪しらつ へらの小学校~

後藤
いや、ちょっと待て待て待て待て!

岩尾
クラスリレーでハッスルし~

後藤
なんやねん。関係ないやろ今。

岩尾
ラルフローレンを着こなし~

後藤
ちょっと待てお前。ただら行言いたいだけやろ。

岩尾
はい~。

後藤
はい~てなんやねん。いや違う、ちゃんと紹介してよ。どこどこで育って、とか。

岩尾
え~、タエコさんはですね、青森県にお生まれになりまして、青森県立青森小学校、青森県立青森中学校、青森県立青森商業高校を卒業後は、青森鉄鋼に就職され、そのまま二人はゴールイン。

後藤
どこで知り合ってん!俺、青森行ったことないで。

岩尾
なんと今日が、初対面でございます!

後藤
なんでやねん!どんな披露宴やねん。

岩尾
どうですか? タエコさんの第一印象は?

後藤
いや、どうですか言われても…。そんなんちゃうねんお前。

岩尾
チェンジしますか?

後藤
いや、ちょっと待てお前。

岩尾
チェンジは2回までとなって…

後藤
いや、ちょっと待て。変わりすぎやろ。

岩尾
交通費、別途いただきます。

後藤
いや、ちょっと待てお前。詳しいなお前は。違う、そんなんええねん。どうでも。

岩尾
それではここで、新郎新婦一旦、お裾直しのため…

後藤
お色直しや!

岩尾
あ~ あ~ あ~。

後藤
なんで今更裾の長さ、直なあかんの。

岩尾
まち針、入刀。

後藤
変わりすぎや。まち針入刀ってなんやねん。

岩尾
20分ほど掛かりますので…。

後藤
裾直すのにかい。

岩尾
こちら、4番の番号札。

後藤
いや、ちょっと待て。なんで前に3人待ってんねん。

岩尾
ベルトとか見つつ…。

後藤
いや待て、おかしいやろがい、そんなもん。ちゃんと進めて!

岩尾
ではここで新郎新婦、気になるお二人のなれそめについてご紹介いたしましょう。

後藤
そうそう、そういう話。

岩尾
お二人が出会ったのは今から2年前のことでございました。

後藤
2年前ね。

岩尾
やだ~ やめてよ~ 放してよ~!

後藤
女の子、男に襲われてる!

岩尾
いいじゃねえか、ねえちゃん。ちょっとぐらいつきあえや。

後藤
女の子、助け呼んだ!

岩尾
そこに!なんと新郎が現れたのでございます!

後藤
俺が助けに来た!

岩尾
やめたまえ。彼女は嫌がってるじゃないか。

後藤
ものすごかっこええな。

岩尾
なに? 貴様、このタエコに逆らおうってのか?

後藤
そっちがタエコかい!待て!おっさんやないかい!
なんで…ちょ、待てお前。なんでワンカップ飲んでんねん。蓋をするなよ。
なんで蓋す…。ちゃう!おっさんはええねん!

岩尾
新郎新婦、退場~!!

後藤
何が気に入らんねんお前。

岩尾
新郎新婦、逆上~!

後藤
いや、怒るわそら!

岩尾
司会者、発情~!

後藤
なんでやねん!ちょっと待て。気持ち悪い!気持ち悪い!気持ち悪…
どこ握ってんねんお前!

岩尾
もっと強く言ってくださ~い!

後藤
ちょっと待てお前、人の披露宴でMっ気出すなよ。

岩尾
申し訳ございません。

後藤
申し訳ございませんやあれへんがな。

岩尾
ちょっと、マリッジブルーでして…。

後藤
なんでお前がなんねん。おかしいやろが。
いや、ちゃう。披露宴やから感動するシーン、作ってくれ。

岩尾
ここで新郎新婦が、夫婦そろって初めての共同作業を行います。

後藤
ケーキ入刀や。

岩尾
皆様、お手元のシーチキンを食べるのをやめて…。

後藤
何食わしてんねん。

岩尾
ご注目くださいませ。

後藤
シーチキン食わしてたんかい。

岩尾
それではいきましょう、新郎新婦——ケーキ……購入!

後藤
買いに行くんかい!もうええわ!

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