1. ネタ名と芸人名
ネタ名:「カーチェイス」
芸人名:アメリカザリガニ
2. 役割構造(コンビ内の機能分担)
感情型ツッコミ × 抜けボケ型+リアクター型のハイブリッド
柳原が怒涛のテンションと大声で場を引っ張る感情主導型ツッコミに徹しつつ、物語のドライブを担う一方、平井は表面的には大人しそうに見えて予測不能なボケ(リアクター含む)を連発する。
3. 型(構造・スタイル)
ミッション完遂型 × ワールド構築型 × 構造破壊型
「銀行強盗からの逃走」というミッションを軸に、現実味のない小道具やアクションを通して徐々に“馬鹿馬鹿しい現実”の世界を構築。だがそのワールド自体も後半では崩壊し、ツッコミすら追いつかないカオスに向かう。
4. ネタスタイル(演技・テンポ・空気)
演技&空気重視型 × 言葉遊び型 × ハイスピード型
小道具なしの舞台で想像力のみでシチュエーションを具現化。演技で「車」「警察犬」「ヘリ」など全てを演出し、無音をも利用した間とテンポの変化が非常に巧妙。途中の「ハザード」や「ウィンカー」などの言葉ネタも絶妙に挿入。
5. 構成要素の流れ
- ツカミ:「日本でカーチェイスしたらどうなる」からの導入(自然体から急展開)
- 展開: 二人の逃走劇が始まり、想像力と演技でカーチェイス世界を構築
- クライマックス: 警察犬→サーチライト→高速道路横断→轢かれるくだり
- オチ: 「ごめんなさい」で自首。典型的な「もうええわ」でシメる
- 回収: 伏線ではないが、あらゆる要素が「無茶な想像」に吸収される構造的回収
6. 笑いの源泉
- ズラし: 「警察犬に噛まれた…→踏まれた」「高速で轢かれた→日曜のお父さん」
- 誇張: ハンドル二つ/ウィンカーの誇張表現/走馬灯が即終わる
- 構造遊び: 一貫した逃走劇なのに、徐々に緊張感が崩壊していく流れ
- 言葉遊び: 「ハザード」「ネックスプリング」「引田しかないよ」など
- 感情の暴走: 柳原のリアクションが感情過剰で、もはやナビゲート不能
7. キャラのタイプと関係性
- 表: 柳原=ツッコミ/平井=ボケ
- 裏: 実質的には平井がワールド構築を担うボケの主導者。柳原はそれに乗る形でツッコミながら、巻き込まれる。主従が逆転した共犯関係型
8. 演技・パフォーマンス面
- ハンドル操作・ぶ〜ん・ぶつかる描写など、演技だけで物理空間を表現
- 走馬灯のスローモーション+叫び演技は、舞台全体の空気を支配
- テンポの緩急(突然の無音・間・急加速)が絶妙で、意識的に“笑いの谷”を演出している
9. 客観的コメント
このネタは「想像力の暴走が、現実を凌駕してしまう瞬間の可笑しさ」に満ちている。どこまでもシュールになっていく展開を、あくまで本気の演技で押し切る演者の力量が肝。観客は「こんなアホな状況に全力で臨む二人」の姿に心から笑わされる。“演技によるバカ”という高度なスキルが根底にある。
10. 最終コメント
カーチェイスを題材にしたネタで、柳原がテンポよく場を回す一方、平井はやる気なさそうな脱力感を漂わせる。その無関心な態度が、ボケる瞬間だけ急に楽しげになるギャップとして機能し、独特の空気を生んでいる。柳原の甲高いツッコミがその温度差をうまく捌き、リズムの良さを演出。後半はスローモーションやネックスプリングといった動きで展開に変化を加え、見飽きさせない工夫もある。ただし、松本人志が指摘したように小ボケの連打で大きな爆発力に欠け、ハイテンションと脱力の融合にもやや不完全さが残った。
【書き起こし】
平井
「まああのね、なんですか」
「海外ではカーチェイスとかあるね」
柳原
「あらあえらいことなっとるよ。何百キロでガガガや」
平井
「あれ日本でやったらもっと危ないね」
柳原
「あれはもっと狭いからえらいことなるで」
(急にコントいりして)「よっしゃい!」
平井
「おっ?!」
柳原
「銀行強盗成功じゃい!」
「あとはこの車乗って逃げるだけや!行くぞ!」
-二人とも席に乗り込む
柳原
「ぶ〜〜〜ん!」
-二人ともハンドルを握っている
柳原
「なんでハンドル二つあんねん!」
「どこ行くねんお前は!」
-平井、肩をすくめる
柳原
「なんの顔してねん、やってもたみたいな顔するなよ」
「俺右行きたい、お前左行きたい、車パーン割れるわアホ」
平井
(左右に割れた車を戻すような仕草)「またこう、戻るかもしれん」
柳原
「なんでやんねん。道は続くやないがな」
「ええねん、俺が運転するから黙っとけ!行くぞ!」
(ハンドルを握って)「ぶ〜〜〜〜ん!」
平井
(横で柳原を眺め続け)「…おい!」
柳原
「なんや」
平井
「危ない…!」
柳原
「わかっとるわそんなこと!」
「今飛ばしとんねん」
平井
「ベルト!」
柳原
「もうええやないかそんな細かいこと」
平井
「危ない!」
柳原
「うるっさいな別にええがな…」
-柳原が渋々シートベルトを引っ張り出す
-平井がそれを受け取って自分の腰で止めようとする
柳原
「なんで二人で一つやねん!」
「運転しづらいわ俺!なんやこのがっちりホールドは!」
平井
「知らんがな」
柳原
「俺はなに田天功やねん!」
平井
「引田しかないよ」
柳原
「わかってるわそんなもん」
大規模な脱出マジックで当時人気だった引田天功
平井
「俺暇やねん!」
柳原
「ほなお前が運転せえよ!左ハンドル設定や、左ハンドル」
平井
「…ええの?」
柳原
「喜ぶな」
「ええよ早よ走れ!」
-平井がハンドルを持って運転を始める
柳原
「そこ右右右!」
平井
(右手右足を陽気に踏み出しながら)
「カッチ…カッチ…」
柳原
「そんでそこ左!」
平井
(左手左足を陽気に踏み出しながら)
「カッチ…カッチ…」
柳原
「ほんで次また右!」
平井
(右手右足を陽気に踏み出しながら)
「カッチ…」
柳原
「何をしてんねんさっきから!」
平井
「ウィンカーやんか」
柳原
「わかっとるわ!」
「そんなん車がやってくれるがな」
「ハザード」(二人同時に両手右足をふわっと上げる)
「いらんねんそんなん!ハイヒールさんみたいになっとるがな」
平井
「あんたもやったがな」
柳原
「みてみ!お前がいらんことしてるからパトカー追いついてきたやないか!どうすんねん!」
平井
「じゃあ僕が奥の手を使いますよ…」
柳原
「そんな機能ついてるの?!この車に!」
平井
「はい…!」
柳原
「よっしゃ見せたれ!」
平井
「行くぞ!パワ〜〜〜〜〜…」
「ウィンドウ!ウィーン」
柳原
「窓開いてる〜〜〜!」
「お前これ純正やんけ、元からついてるやん」
「何してんねん!もうええ、車置いて逃げるぞ!」
平井
「え、もうええの?」
柳原
「車置いて逃げる!」
-二人で足踏みをして走って逃げ出す
-その間ずっと平井は柳原の顔を見ている
柳原
「見過ぎやお前!」
平井
「どこ行ったらええの?」
柳原
「ついてきたらええ!ついてきたらええねん!」
「ワンワンワン!あちゃー!えらいこっちゃ!」(反対側を指差す)
「警察犬や!もう逃げられへん!くそ〜!」
平井
「僕に任せてください」
柳原
「お前向こうは訓練された犬やぞ、大丈夫か?」
平井
「大丈夫です!」
柳原
「きいつけろよ!」
-平井、警察犬に近づいていく
平井
「グアア〜〜〜!」(片腕を押さえて戻ってくる)
柳原
「ああ〜やっぱり!」
平井
「犬に…腕を…」
柳原
「大丈夫か!」
平井
「踏まれた…」
柳原
「大したことない!」
「大丈夫やで〜!肉球やん柔らかい柔らかい〜!」
-平井が肉球を模した両手で柳原の顔に触る
柳原
「ん〜ちょっと冷たい」
「なんの話やねん!」
「もうええ、逃げるぞ!」
-二人、また走る
平井
(足元で戯れるように)「おい、やめろやめろ〜」
柳原
「警察犬懐くか!」
「訓練されとんねん!どんだけ優しい心やねんお前は!」
平井
(肩を指差して)「ここに野鳥がとまるくらい」
柳原
「やかましわ!ずっと山育ちかお前は!」
「もういくぞついて来い!」
「ピカ!うわ!サーチライトヘリコプターや!えらいこっちゃ!」
平井
「私に任せてください…!」
柳原
「何?!」
平井
「こう見えても昔、高校野球児だったんです…」
(徐に石を拾う)
柳原
「やくたつたないか!」
平井
「この石を使って…!」
柳原
「よし、いったれ!」
-平井、持ってた石を柳原に渡して座り込む
平井
「よし来い〜!」
柳原
「キャッチャーかい!」
「今の流れやったら投げてパリンちゃうんかお前!」
平井
「そっちじゃない(不服そうに)」
柳原
「なんで怒ってんねん」
「もうあかん、逃げられへん〜!」
平井
「大丈夫です…!」
柳原
「何?!」
平井
「目の前にあれ、高速あるじゃないですか」
柳原
「うん」
平井
「あっこ、横切ります…!」
柳原
「大丈夫か?危険やぞ!」
平井
「私についてきてくださいよ!」
-平井、柳原を庇うような体勢で渡るタイミングを見計らう
平井
「よし!」
(踏み出す)
「どん!」
柳原
「轢かれてる〜!」
-二人ともスローモーションで動き始める
-吹っ飛ぶ平井、手を伸ばす柳原
柳原
「ひらい〜!」
平井
「やなぎさわ〜!」
柳原
「柳原!はら!間違えんとって!」
平井
「今までのことが走馬灯のように駆け巡る〜!」(吹っ飛びながら)
柳原
「死ぬ時はそうやいうな〜」
平井
「昭和48年3月12日に生まれ〜」
柳原
「うん〜」
平井
「今に至る〜」
柳原
「みじか!」
「人生ぺらぺらやで、大丈夫か平井〜!」
-平井が地面に倒れ込む
-スローモーションがとける
柳原
「ひ、平井〜〜〜!」
-平井、地面を転がっていき、腕枕で寝そべる形に落ち着く
柳原
「無茶苦茶余裕やん!」
「日曜日のお父さんみたい」
-平井、片手でリモコンをいじる仕草
柳原
「変えんなチャンネル!」
「お前そんな元気やったら戻ってこい!」
-平井が起きあがろうとして、両足で反動をつける
柳原
「そやそや!ネック〜スプリング!」
-平井、失敗する
柳原
「できへんのかい!」
「お前できへんのやったら余計なことすな!」
「お前がそんなんしてる間に警察に囲まれてるやないか!」
平井
「こうなったら奥の、なんかすっごい奥の手を使うしかないですね」
柳原
「まだあんねんな?!頼むぞ!」
平井
「う〜〜〜ん…」
「ごめんなさい」(両手をお縄に差し出す)
柳原
「捕まんのかい!もうええわ!」
