1. ネタ名と芸人名
- ネタ名：「しずちゃんのかわいさアピール」
- コンビ名：南海キャンディーズ
2. 役割構造
- 逆転型＋リアクター主導型
- 山里が表向きはツッコミだが、全体構造ではしずちゃんの「存在・言動」にリアクションして物語が進むリアクター型。
- 途中からはしずちゃんがツッコミ的観察を繰り出し、山里が“ツッコミきれない”ツッコミとして追い込まれていく構造。
3. 型（構造・スタイル）
- テーマ追求型＋キャラドキュメント型
- しずちゃんの「自分の魅力を伝えたい」欲求を軸に展開され、その試みの全てがズレていく。
- 実質的にはしずちゃんというキャラを山里が外部視点で描く“キャラドキュメント”的構造。
4. ネタスタイル（演技・テンポ・空気）
- ナチュラル会話型＋演技＆空気重視型
- 漫才というよりも一種のコント風に見える構成で、リアルな言い合い・身振り・ボケのテンションの緩急が効いている。
- 途中の「水辺の天使ごっこ」では演技性を強調し、空気の転換を図る。
5. 構成要素の流れ
- ツカミ：大女の大砲→「惜しいわ〜」で唐突な美醜対決開始
- 展開：「しずちゃんかわいい論」→その証明としてのアピール→ズレの連発
- クライマックス：「ムヒ」「ニラ」「シメジ」「パンティー」等、次々に崩壊するアピール
- オチ：「フィリピンの工場長」＝全てが破綻してなおキャラとして着地する笑い
6. 笑いの源泉
- ズラし：「ムヒ」「シャネルのムヒ」など、意図とズレた選択で笑い
- 構造遊び：アピール→否定→別のアピール→さらなるズレの連鎖構造
- 誇張と悲哀：「ゲロを吐かれた」「スカウトされた」など悲惨さの過剰演出
- 感情の暴走：最終盤でのアピールがエスカレートして破綻していく
7. キャラのタイプと関係性
- しずちゃん：圧倒的パワー系天然ボケ。自分を信じているようで破綻してる。
- 山里：冷静でありたいがツッコミきれず、しずちゃんの破壊力に巻き込まれる。
8. 演技・パフォーマンス面
- 山里：速く、言葉に切れがあり、急なテンション上げも自在。
- しずちゃん：声量と存在感、無意識の暴走演技が圧巻。「カッ ペッ」からの「ニラ」は視覚的・聴覚的にも強烈。
9. 客観的コメント
このネタは南海キャンディーズの典型でありながら、変化球でもある。山里のツッコミ技術と、しずちゃんの逸脱が「ボケの悲劇」として笑いを深くする。突拍子のないボケと、ギリギリでの収拾が両立しているため、コント的満足感が強い。特に「しずちゃんアピール→山里反応→現実での逸話→崩壊」のリズムが巧妙。
10. 最終コメント
このネタにおける魅力は、自己アピールを試みるしずちゃんの姿が、ことごとくズレていく“悲しみのボケ”にある。ムヒを香水と言い切り、岩と間違えられ、スカウトされても「第２のスーザン後藤」。その一つ一つが、ボケではなく現実と感じられるからこそ、笑いの背後に“哀しさ”が滲む。山里は、冷静なツッコミを試みながらも、途中からはしずちゃんのパワーに飲み込まれ、「否定」より「受容」へと移行する。その変化が、ネタ全体に柔らかくも狂気的な質感を与えている。終盤の「フィリピンの工場長」で一気に全てが脱力し、漫才の幕が静かに閉じる。南海キャンディーズにしかできない、破綻寸前で成立する漫才と言える。
【書き起こし】
（山里）どうも～
（山里）南海キャンディーズです
（しずちゃん）ド～ン
（山里）あ～、大女の大砲で幕を開けました！いや～楽しくなってきましたよ～
（しずちゃん）惜しいわ～
（山里）何だい急に？しずちゃん？
（しずちゃん）井上和香もまあまあいい線まではいってんねんけどな～
（山里）お～？頭強く打ったか？
（しずちゃん）あ～残念やわ～
（山里）だいぶ残念なあなたが何言ってんの？
（しずちゃん）山ちゃん見て、めっちゃ“ああなりたいわ～”みたいな目で見てくる
（山里）しずちゃん、あれはね、新種の妖怪を見る目だよ
（しずちゃん）あんた、そんな骨盤しとったら丈夫な赤ん坊生まれへんで
（山里）お～、土俵に骨盤を用いたか…無理だ ええ？しずちゃん、さっきから上から言ってるけどさ、どこが勝ってるっていうのよ？
（しずちゃん）え？フフッ、まあ、顔？
（山里）裁判だけはやめてください。勝てる気がしない
（しずちゃん）あれ？今、笑った？
（山里）いや、それは笑うしかないよ、しずちゃん
（しずちゃん）勝ってる思たん？
（山里）そら１回コールド負けよ
（しずちゃん）逆に笑けてくるわ
（山里）逆って何だいしずちゃん？
（しずちゃん）来いや！
（山里）しずちゃん、しずちゃん！
（しずちゃん）何？ビビってんのか？
（山里）しずちゃん！
（しずちゃん）ほんなら、あんた水着買おう思たらアメリカ行かなあかんて言われたことあんのか？
（山里）しずちゃん！
（しずちゃん）夜の公園で三角座りしとったら岩と間違えられたことあんのか？
（山里）しずちゃん！
（しずちゃん）街歩いてて“女の子同士の殴り合いのビデオ出てくれへんか”って言われたことあんのか？
（山里）しずちゃん、そんな悲しいスカウトないよ。何だよ？
（しずちゃん）まあ、そのときはべた褒めやったけどな
（山里）何て褒められたの？
（しずちゃん）“君やったら第２のスーザン後藤いける”って
（山里）う～ん、まず第１のスーザン後藤が分かんない。だいぶ輝いてるね、しずちゃん、でも
（しずちゃん）私のことアピールしてよ
（山里）お～いいよ、しずちゃん。じゃあさ、せっかくだからかわいさアピールしてやろうよ。しずちゃん、女の子っぽいとこ何か言ってあげて
（しずちゃん）私、その日の気分で香水変えたりすんねん
（山里）わ～、俺ブラボーって言葉しか思いつかねえ。え～？しずちゃん、今日香水何使ってんの？
（しずちゃん）ムヒ
（山里）お～しずちゃん、ムヒは香水じゃないよ
（しずちゃん）シャネルのムヒ
（山里）うわ～しずちゃん、だいぶ残念に仕上がってるね ええ？しずちゃん、よ～し、ここでもっとかわいさアピールするためにさ、こう、なんか水辺ではしゃいでる感じ出してみてよ
（しずちゃん）うわっ、冷たい！うわっ、キャッキャッキャッ
（山里）どうですか皆さん？M-1に天使が舞い降りたぞ～、天使だ～ うん
（しずちゃん）ほら！
（山里）うわ！やったな～
（しずちゃん）つかまえてごら～ん
（山里）待て～ ハハハッ。お～い待てよ 僕のビーナス ウフフフ
（しずちゃん）ウフフフ ハハハ
（山里）ハハハハ アハハ
（しずちゃん）カ～ッ ペッ
（山里）おお…
（しずちゃん）アハハ アハハ アハハ、ウエッ ウッ ウエ～ッ、アハハハハ
（しずちゃん）ニラだよ
（山里）台なしだ！かわいさアピールする上でニラは不向きだよ
（しずちゃん）今、私輝いてるな
（山里）うん、鈍くね
（しずちゃん）さっきからな
（山里）うん
（しずちゃん）あの男がずっと色目使ってきよんねん
（山里）お～、それはイバラの道ですぞ
（しずちゃん）あんた、私とは恋せえへんほうがええよ。ボロボロになるから
（山里）う～、ヤベえね。日本が銃社会だったら撃ってるぜ。うん。いいのかい？しずちゃん。ちょっと結構男前よ
（しずちゃん）あれより山ちゃんのほうが勝ってるわ
（山里）まあ、皆さんリハビリだと思って。そうかい？うん
（しずちゃん）だって山ちゃん、あれに似てるやん
（山里）誰？
（しずちゃん）シメジ
（山里）うん、最低でも哺乳類に立候補したい
（しずちゃん）内面も絶対山ちゃんのほうが勝ってるわ
（山里）ああそう、内面。確かに。言ってあげて
（しずちゃん）山ちゃんな、めっちゃ気前いいねん
（山里）お～
（しずちゃん）女の人がはいた中古のパンティーやのに、めっちゃ高いお金出して買ったりすんねんで
（山里）しずちゃん、テレビって怖いんだぜ。ダメだよ～。もっと うまくアピールしてよ。俺の男前のとこをさ
（しずちゃん）あんたにはないやろ
（山里）何がよ
（しずちゃん）写メールで風景撮ってるだけで警察に囲まれたことなんか
（山里）“お前か 連続盗撮魔は”だって。僕の顔はね、初犯じゃなくて連続らしいの
（しずちゃん）あとあれもないやろ
（山里）どれよ？
（しずちゃん）赤ちゃんに“いないいないばあ”見せてゲロ吐かれたことなんか
（山里）しかも３人！
（しずちゃん）さすがお店でお釣り渡されるとき、いつもこれぐらい距離取られる男は違うわ
（山里）たまに落とすヤツいるからね うん
（山里）しずちゃん、ごめん。推されてる気、全くしないや
（しずちゃん）ほんなら、ちょっとメガネ外してや
（山里）なるほど。あとは？
（しずちゃん）前髪 横に流して
（山里）しずちゃん、これ何？
（しずちゃん）フィリピンの工場長
（山里）否定できない！
