【M-1グランプリ2004】POISON GIRL BAND『中日と帽子とハト』分析/書き起こし

1. ネタ名と芸人名

ネタ名:中日と帽子とハト
芸人名:POISON GIRL BAND(吉田大吾・阿部智則)


2. 役割構造(コンビ内の機能分担)

ツッコミ主導型+リアクター主導型
吉田が情報提供者のポジションから徐々に脱線しながら独自の理屈を展開し、阿部が「無邪気な混乱者」として小さな違和感を挟む構造。ツッコミというより”脱線のための加速装置”として阿部が機能している。


3. 型(構造・スタイル)

構造破壊型+ワールド構築型+フレーズ反復型
当初「プロ野球の話」から始まりつつ、「帽子が似合ってた」という違和感のある着眼点にフォーカスし、帽子→ハト→頭→ガチャ的抽選→中日オレという独自の妄想世界が構築される。現実の構造(野球の話)を破壊しながら、新たな幻想的文脈を構築している。


4. ネタスタイル(演技・テンポ・空気)

ナチュラル会話型+言葉遊び・言語操作型
日常的なトーンの中にズレを忍ばせるスタイル。会話のテンポは緩やかで、阿部のワード選択(例:「帽子が似合ってた」「ミルク」「中日オレ」)が脱線のトリガーとなる。


5. 構成要素の流れ

  • ツカミ:プロ野球の話題から自然に導入
  • 展開:中日の強さ→帽子→サイズ→ハト→帽子ガチャ→立浪・落合→ミルク→中日オレ
  • クライマックス:「つぶつぶ中日」や「中日オレ」という概念のズレの最大化
  • オチ:吉田の「野球チーム。もういいよ!」という現実への帰還=急ブレーキ

6. 笑いの源泉

  • ズラし:帽子が似合っていた=強いという突拍子もない因果関係
  • 構造遊び:「帽子から出てくる」→ガチャ的発想→12球団総取りなど
  • 言葉遊び:「6-4で中日とミルク」→中日オレ→つぶつぶ中日
  • 感情の暴走:阿部の「ボッサボサ」連呼や「中日オレ」妄言
  • 誇張:立浪・落合が出てきたら「当たり」「総取り」

7. キャラのタイプと関係性

  • 吉田:理屈屋型ボケ(情報を正確に出しつつも論理を徐々に歪めていく)
  • 阿部:ナチュラルボケ/リアクター型(些細なズレを増幅し、世界観を膨張させる)
    結果的にボケの主導権は阿部が握っているとも言える。

8. 演技・パフォーマンス面

  • 阿部の「ボッサボサ」「中日オレ」などの語感のリズムと反復
  • 吉田の逐次ツッコミ風説明の中にある冷静な語りのズレ
  • 声のボリュームや抑揚は一定に保ち、狂気がじわじわ染み出る構成

9. 客観的コメント

このネタは「意味のないことに意味があるように語る」というPOISON GIRL BANDの美学の集大成です。特に“帽子が似合っている”というどうでもいい観察から、ハトの生態、中日選手の頭部、果ては「中日オレ」なる飲料に至るまで、言葉と発想の連鎖によって世界が構築されていく。これは観客に“世界を共有する快楽”を提供しており、「論理的な言葉遊び」が好きな層に刺さります。


10. 最終コメント

POISON GIRL BANDのこのネタは、「帽子が似合っていた中日」という異常に些細な視点から出発し、帽子→ハト→頭部→ガチャ的構造→飲料という一連のイメージ連鎖を見事に繋げ、観客を不可思議な妄想の旅へと誘う。吉田の冷静かつズレた情報提供と、阿部の“天然”ではなく“狂気”を孕んだ発言の応酬は、ボケとツッコミの枠を超えた共犯関係的なボケの連鎖として機能している。特に「ボッサボサのハト」「中日オレ」「つぶつぶ中日」といったフレーズの選定と語感の妙は、聴覚的な快楽とイメージの膨張を同時に与え、観客をニヤつかせる。単に奇をてらった言語遊びではなく、現実を脱構築しながら「それっぽい理屈」で世界を裏返す力が、コンビの真骨頂だ。緻密な演技と脱力した空気の中に宿る知的な狂気が、唯一無二の“お笑い体験”を創出している。審査員も評した通り、どちらかがツッコミ/ボケということなく、平行線でずっと進行し続ける為、ずっと聞いていられる感がある一方で、山場に欠ける点が少し残念。二人の柔和さがおぎやはぎの二人を想起させる面も。

【書き起こし】

(阿部)はい どうも
(吉田)POISON GIRL BANDです
(吉田)ということで 今年はね—プロ野球のいろいろゴタゴタがあって—新規参入とかね ストライキとかね
(吉田)でも終わってみれば セ・リーグのほうはね—中日がちょっと強かった
(阿部)確かに
(吉田)パ・リーグは西武とダイエーがちょっと競ってたけど—セ・リーグは中日がダントツで強かったね
(阿部)あ~強かったね
(吉田)今年はね
(阿部)だって帽子が似合ってたもんね
(吉田)似合ってたね。あの~今年の中日はね、確かに帽子が似合ってた
(阿部)もうさ、選手一人一人が帽子が似合ってんだもんな
(吉田)みんな似合ってんだもん。やんなっちゃうよ、もうね
(阿部)しかもさ、サイズが—
(吉田)合ってる
(阿部)合ってんのな
(吉田)帽子のサイズね?
(阿部)そうそうそう
(吉田)お前の言うサイズは帽子のサイズのことね?
(吉田)でも中日、そういうチームだから。「帽子のサイズは合わせていこうぜ」っていうね—球団創設以来 決まってんの、これ
(阿部)そうなんだよ
(吉田)そのもとに集まった選手たちだから、みんなね 帽子のサイズは合ってた。中日はね
(阿部)ただ あの帽子からはハトは出てこない
(吉田)ハトは出てこないんだ。あの帽子からはね
(阿部)お前 ハト知ってる?
(吉田)俺はね、ハト知ってんだよ
(阿部)ああ そうなんだ
(吉田)お前に言ってなかったけど、俺はね、ハトを知ってる
(阿部)あ~そうなの。“ハ”に“ト”でハトだよ?
(吉田)そっちのハトでいいんだろ? そっちのハトでいいなら、俺は知ってるよ
(阿部)ま~いろんなハトいるけどね
(吉田)いろんなハトいるね、確かにね
(阿部)白いハト、黒いハト、あと灰色のハトな
(吉田)一番メジャーなやつね、灰色のハトね
(阿部)あとボッサボサのやつ、いるな
(吉田)たま~にいる。たま~に公園にそういうハトいる
(阿部)あれ 何だ?
(吉田)かわいそうなんだよ、あれ
(阿部)そうなの?
(吉田)たま~にいる、確かに
(阿部)ボッサボサだからな
(吉田)あんま言うな。かわいそうなんだから
(阿部)ホント ボッサボサだから
(吉田)あんま言うなって。たま~にいるんだ、ボッサボサのハト。かわいそうなんだよ、あのハトはさ
(阿部)でもどんなハトも、中日の帽子からは—
(2人)出てこない
(吉田)1匹も出てこないよな。中日の選手の帽子からはハトなんか
(吉田)野球やってんだもん、だって
(阿部)中日の選手の帽子から出てくんのは、おっさんの頭だけなの
(吉田)そう。中日の選手の帽子取ったってね、おっさんの頭しか出てこないよ。若干 毛の生えたおっさんの頭しか出てこない
(阿部)そのとおり
(吉田)たまに—白髪交じりの場合があんだけど
(吉田)これコーチね
(阿部)うん そうそう
(吉田)白髪交じりの場合は、これコーチと思っていただいて—まず大丈夫。たま~にあるからね
(阿部)で、立浪の頭が出てきたら当たりだよ
(吉田)当たり?
(阿部)当たりだよ、お前
(吉田)当たりとかあんの?
(阿部)ああ
(吉田)まあ2000本ヒット打ってるからね。立浪の頭が出てきたら当たりなの、それは?
(阿部)もう1回引いていいよ
(吉田)もう1回引いていいの? 帽子を?
(阿部)うん
(吉田)あっ、まあ当たりだからね。じゃあもう1回引いてさ、今度 落合監督が出てきたら?
(阿部)もう総取り
(吉田)総取り?
(阿部)親の総取りだね
(吉田)俺は親だったの? 親の総取りになんの?
(阿部)12球団
(吉田)12球団もらえんの?
(阿部)よかったじゃん お前
(吉田)まあまあ、落合の頭はね、12球団全部もらえんだ
(阿部)そうだよ、よかったよ
(吉田)そういうゲームがあんの? 選手たちはなに? 立ってんの?
(阿部)そうそうそう
(吉田)で、帽子バッて取って…
(阿部)お~ 何だ 何だ?
(吉田)って やられんの? なるほどね。大体 背番号で分かんじゃね?
(吉田)上から見てさ、“ああ立浪だな”とかさ
(阿部)まあ なんとなくな
(吉田)なんとなく分かんじゃないの?
(吉田)でも中日ね、セ・リーグではちょっと強かったけど—
(吉田)日本シリーズ、ちょっと残念だったな
(阿部)あ~そうだったね
(吉田)西武に逆転されてさ
(阿部)あ~
(吉田)でもあれ最初にね、3勝してね—王手をかけたのは中日だったんだ
(阿部)そうそうそう
(吉田)で 俺 その時点で—8割方、8-2でね 中日が日本一になると思ってた
(阿部)ああ そう
(吉田)俺はもう そう踏んでたね
(阿部)俺はまだ いっても6-4ぐらいだと思ってたよ
(吉田)まだその時点では6-4だと思ってたの? 6はどっち?
(阿部)こっち
(吉田)ううん、手じゃなくて。手はどっちでもいいわ
(阿部)6が中日よ
(吉田)6がやっぱり中日ね? 6割方 中日が優勝すると思ってた
(阿部)で 4がミルク
(吉田)ミルク? 6中日の4ミルク?
(阿部)ミルク
(吉田)なんか“中日オレ”みたいになっちゃってる。6中日の4ミルクじゃさ
(阿部)中日オレ
(吉田)俺 ミルクと中日はね、混ざんねえと思うんだよね
(阿部)いや よく振ったらいい
(吉田)よく振ってもね、混ざんねえし。まず中日を缶に入れてみっていうさ
(阿部)で 飲み干すときは、よく底をたたいて
(吉田)つぶつぶ中日みたいになった 今度。つぶつぶ中日みたいになったじゃん
(阿部)なに? つぶつぶ中日ってないの?
(吉田)ない。つぶつぶオレンジとかはあるけど、つぶつぶ中日はね—まだ売ってねえと思うよ
(吉田)まあ 売ってたら俺 買うけどね。すぐ。速攻 買い占めるけど
(阿部)中日オレは?
(吉田)中日オレもない
(阿部)あ~そうなんだ
(吉田)いちごオレとかあるけど、中日オレはまだ出てないんだ
(阿部)あ~そうなの。じゃ 中日って何よ?
(吉田)いや 野球チーム。もういいよ!

1件のコメント

  1. 埋もれてしまった実力者ポイズン・ガール・バンドの名作ですね。
    素晴らしいです。書き起こしでも面白い!

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