1. ネタ名と芸人名
- ネタ名:栃木 vs 茨城
- 芸人名:U字工事(福田薫・益子卓郎)
2. 役割構造(コンビ内の機能分担)
- ツッコミ主導型 × 感情型ツッコミ × Wボケ的展開
- 益子は“怒れる栃木県民”としてのキャラを一貫して演じるが、その情念が過剰に振れ、逆にボケとしても機能。
- 福田は通常の立ち位置ではボケだが、益子の過剰反応に冷静に突っ込むことで、ツッコミ的な役割を果たす場面も多い。
3. 型(構造・スタイル)
- ワールド構築型 × 感情ストーリー展開型
- 栃木・茨城・群馬・埼玉といった“北関東世界”を一つのローカル宇宙として構築し、その中での価値観やタブー、住民感情が詳細に描かれる。
- 益子の激しい地域差別的発言がドラマの核となり、感情の爆発と矛盾の回収によって笑いを生成。
4. ネタスタイル(演技・テンポ・空気)
- 演技&空気重視型 × ナチュラル会話型
- 地元訛りを強調した自然な会話口調と、生活感ある話題選び(結婚、引っ越し、ラブホテルなど)が特徴。
- 益子の情緒不安定な怒り芸が、空気に独特の緊張と緩和を生む。
5. 構成要素の流れ
- ツカミ:栃木と茨城を混同される怒り → ローカル愛の主張
- 展開:福田の結婚願望と「磯山さやか」発言から、茨城を巡る激怒
- クライマックス:益子の妹が茨城の男と結婚していたというオチに近い事実
- オチ:益子が茨城の海産物に心を動かされ、矛盾を突かれる
- 回収:「“いばらき”な!」と正しい地名訂正で地域愛の表出 → 逆謝罪ギャグ → 〆の「いいかげんにしろ」
6. 笑いの源泉
- ズラし:栃木愛を語る益子が、実は茨城産品に満足しているという矛盾
- 誇張:「埼玉に亡命」や「だるま工場勤務の呪い」などの比喩誇張
- 構造遊び:謝罪を何度も繰り返し、謝る方向のボケで笑わせる
- 言葉遊び:「エーゲ海」ラブホテルや「水戸納豆のワラみてぇな髪型」などの比喩ギャグ
7. キャラのタイプと関係性
- 益子:表向きツッコミだが、実質“感情の暴走ボケ”としての機能が強い
- 福田:一見ボケだが、客観的視点と冷静さを保ち、観客との橋渡し役としての“ナビゲーター”機能を持つ
8. 演技・パフォーマンス面
- 栃木訛りの強調がリアリティと独特のリズムを生み、演技に説得力を与える。
- 益子の怒鳴り声、早口、突然の語気の緩和が感情の振幅を強調。
- 福田の飄々とした受け方が、過剰な益子を浮かび上がらせる。
9. 客観的コメント
このネタは、ローカル出身芸人ならではの“地元愛とコンプレックス”を逆手に取り、そこに架空のタブーや設定を盛り込むことで世界観を強化している。栃木・茨城・群馬・埼玉の関係を知っていればより深く楽しめるが、知らなくても感情のズレや矛盾の笑いで十分機能する。演技・テンポ・方言・設定全てが絡み合った総合芸術的な漫才。
10. 最終コメント
U字工事の「栃木vs茨城」ネタは、北関東という地理的・文化的ローカル性を最大限に活かしながら、そこに過剰な感情と設定を重ねて“ミニチュア国家論争”のような壮大さを纏わせている。益子の栃木原理主義的な怒り芸は、一歩間違えればただの悪口になりかねないが、福田の柔らかく冷静な相槌とツッコミがそれを上手く緩和し、笑いとして成立させている。
特筆すべきは、益子のキャラが抱える「矛盾」と「感情の裏表」だ。茨城を徹底的に貶しながら、実は妹が茨城の男と結婚し、さらに茨城の海産物にうっとりしてしまう様は、まさに“地域愛と敵愾心の二重性”を体現している。この構造は、地元民あるあるでありながら、普遍的な「人間の矛盾」にも通じ、ただのご当地ネタを超える厚みを与えている。
ローカルを知る者にとっては刺さるし、知らない者にとっても“情念”が突き刺さる。これは単なる方言漫才ではなく、地域感情を演劇的に昇華した、完成度の高いワールド構築型漫才である。
【書き起こし】
(福田)どうも よろしくお願いします
(福田)ありがとう ございます
(福田)いや~ 僕らですね
(益子)はい はい
(福田)2人とも栃木県出身なんですけども
(益子)そうですわね 栃木で
(福田)ねえ
(益子)ねえ ホントにねえ
(益子)茨城じゃないかんね これね
(福田)よく間違えられっちゃうんでね
(益子)冗談じゃねえ ホントにね
(福田)なあ?
(益子)そんな一緒にしてほしくねえわ 茨城なんかと
(福田)やだよねえ
(益子)ほうだねえ
(益子)茨城なんか“関東地方のお荷物” って言われてんだから
(福田)そこまで言うなよ おめえ
(益子)茨城なんか水戸納豆に おんぶにだっこだかんね
(福田)やめとけっつの 怒られっから
(益子)こんなやってますけどもね
(益子)オラもう30なんでね
(福田)そうすね
(益子)そろそろ もう 結婚なんかも考えたいなと思って
(福田)そういう年 なっちゃってねえ
(益子)お前 どういう人と結婚したいの?
(福田)あっ 俺?
(益子)うん
(福田)僕は芸能人で言ったら…
(益子)誰 誰?
(福田)あの磯山いそやまさやかさんみたいな人が いいんすけど
(益子)ああ 磯山…
(福田)ええ かわいいっすよね
(益子)何つった 今?
(福田)いや 磯山さやかさんかわいいべ あの人
(益子)いや おめえ あの女 茨城の女だかんな
(福田)それがどうしたんだよ
(益子)しかも最近じゃ「水戸黄門」に レギュラー出演して— さらに1枚乗っかってんだかんな こりゃ おめえ
(福田)それが何だよ
(益子)なんだって おめえ
(益子)茨城の人間と結婚したいなんぞ 栃木県民のタブーを 犯してんじゃねえか
(福田)そんなタブー ねえよ おめえ
(益子)血迷ったか
(益子)バチ当たりが おめえ こら
(福田)俺 言われ過ぎだべ
(益子)おめえ 大体 磯山さやかと結婚したいなんて そのフレーズな—
(益子)おめえ とちぎテレビだったら 放送禁止用語だかんな
(福田)禁止じゃねえよ
(益子)そうだろうが おめえよ
(益子)大体なあ おめえ 茨城の言葉 分かんのか おめえ
(福田)ほんなん おめえ 栃木と一緒だべ?
(益子)一緒じゃねえよ おめえ
(益子)アクセントは よくよくだし イントネーションはごじゃっぺだし でれすけくっちゃべ…
(福田)何言ってっか分かんねえよ
(益子)それとな… 群馬に住むのが どんだけつらいことか— 分かってんのか おめえ?
(福田)なんで群馬に 移り住まなきゃいけねえんだ?
(益子)そりゃそうだろ おめえ
(益子)栃木も茨城も追い出されたら 行くとこ 群馬しかねえだろが
(福田)そんなこと ねえべよ
(益子)おめえ 群馬なんか 一個もいいとこ ねえかんな
(福田)いっぱい あっぺ?
(益子)ねえわ 風は強えし 山ばっかりだし 海はねえし…
(福田)栃木と全く一緒だべな
(益子)一緒じゃねえ 栃木には海があんだろが おめえ
(福田)ねえべ
(益子)栃木は海なし県だべ
(益子)あっぺら おめえ
(益子)鹿沼かぬまインターチェンジ ブーンと降りた所に— 右手を見っと “エーゲ海”ってのがあんだろ
(福田)それ ラブホテルだろ 恥ずかしいこと 言ってんじゃねえよ
(益子)とにかく おめえ 群馬に住んだらなあ 一生 だるま工場に勤めなきゃ いけねえんだかんな おめえ
(福田)群馬イコールだるまか
(益子)そうだろが おめえよ
(福田)じゃ いいよ
(益子)何が
(福田)俺 埼玉住むからよ
(益子)おめえ 埼玉住むとか 夢みてえこと言ってんじゃねえよ
(福田)現実的だべ
(益子)ふっざけんじゃね 俺 30年生きてっけど 栃木から埼玉まで 無事 亡命したヤツは— 見たことねえかんな コラ おめえ
(福田)“亡命”って何だ おめえ
(益子)おめえな 無事 埼玉に住めたらな おめえ 栃木の下野しもつけ新聞に 号外が出るわ
(福田)話がでけえんだよ おめえよ
(益子)おめえ 栃木県民に謝れや
(福田)なんで謝らなきゃいけねえの
(益子)そりゃそうだろ 茨城行くとか 埼玉行くとか
(益子)失礼なんだろが
(福田)いいべ 別に
(益子)謝れっつってんだろけえ
(福田)分かったよ 謝りゃええんだべ?
(益子)そうだ おめえは
(福田)栃木県民の皆さん どうもすいませんでした
(益子)そっち 茨城方面だろが おめえ
(福田)知らねえよ ほんなのよ
(益子)ちゃんとやりゃあ おめえ
(福田)つうか おめえな
(益子)何だ
(福田)さんざん茨城の人と結婚すんなとか 言ってっけどよ
(福田)おめえの妹 あれ 茨城の男と結婚したべ
(益子)急に何… どうしたのよ
(福田)いやいや これ ホントの話ですから
(益子)いや バカ こいつバカだから
(福田)いや おめえ 言ってたろ
(益子)バカだから こいつ バカ
(福田)いや 言ってたべ
(益子)何が おめえよ
(福田)妹のミチヨがよ 日立のチカシ君とこ嫁いだっつって うれしそうにしてたべ おめえ
(益子)違う 妹は俺が茨城に— スパイとして送り込んだだけだ
(福田)なに スパイって
(益子)ふざけんな おめえよ
(益子)毎年 お正月にな 写真付きで情報が送られてくんだ
(福田)それ 年賀状っつうんだよ
(益子)ふざけんじゃねえぞ おめえよ
(益子)それだけじゃねえぞ おめえ ちょこちょこ茨城の海産物も 送られてくんだかんな
(福田)なんだよ
(益子)あれが うんまくってよぉ(笑い声)
(益子)ハマグリとか 食ったことあります? しょうゆでチョロッと うめぇんだ あれ たまんねえんだ
(益子)なに なに?
(福田)おめえ 茨城のこと 好きだべ
(益子)好きじゃねえよ 何言ってんだ こいつバカか
(福田)さっき 海産物届いてうれしいとか 言ってたべよ
(益子)してねえや うるせえ
(福田)言ってたべ おめえ
(益子)うるせえな 水戸納豆のワラみてぇな 髪型しやがって
(福田)さんざん茨城 茨城言ってるけど ホントは茨城のこと 好きなんだべ?
(益子)おい ちょっと待てや
(福田)何だよ
(益子)“いばらぎ”じゃなくて “いばらき”な おめえ…
(福田)大好きなんだべや おい しまった! みたいな顔すんな おめえ
(福田)聞きました お客さん? こいつホントは茨城のこと 好きなんです
(益子)やめろ やめろ おめえ
(福田)絶対好きですよ
(益子)栃木県警に通報されたら どうすんだ この野郎 おめえよ
(益子)ああ じゃあもういい 俺が悪いんや ごめんねごめんね~
(福田)ふざけんなよ おい
(益子)どうだ おめえよ
(福田)おめえがなあ 栃木県民に謝れや
(益子)なんで俺が謝んなきゃ…
(福田)謝れっつうの
(益子)栃木の皆さん どうもすいませんでした
(福田)そっち茨城方面だろ
(福田)いいかげんにしろ
(2人)どうも ありがとうございました
