【M-1グランプリ2008】モンスターエンジン『ハリウッド映画に出たい』分析/書き起こし

1. ネタ名と芸人名

ネタ名:「ハリウッド映画に出たい」
芸人名:モンスターエンジン(大林健二・西森洋一)


2. 役割構造(コンビ内の機能分担)

ツッコミ主導型 × キャラ型(リアクター)
大林が一応の「主導者」的ポジションをとりつつも、西森が“異常なリアクション”と“異物としてのキャラクター”で笑いを奪う形。主従の転倒が繰り返される点で、動的な主従逆転型ともいえる。


3. 型(構造・スタイル)

ワールド構築型 × メタ漫才型 × ミッション完遂型
ハリウッド映画という空想の舞台を即興で立ち上げ、即席の世界観を2人で構築。その中で「人間と宇宙人の感動シーンを演じる」という“ミッション”を設定しつつ、それ自体がすぐ茶番化・脱線化していく。


4. ネタスタイル(演技・テンポ・空気)

演技&空気重視型 × 言葉遊び・言語操作型
音(「ピピッ」「ドロドロ」)やセリフ(「お待たせしました お坊ちゃま」)に頼った笑い、また宇宙人の“謎言語”など言語の不条理性を用いた遊びが際立つ。加えて、西森の声芸が大きな比重を占める。


5. 構成要素の流れ

  • ツカミ:大林の夢「ハリウッド映画に出たい」宣言
  • 展開:想像シーンで撃ち合い・宇宙人との対決
  • クライマックス:感動シーン → 西森暴走 → 表彰状
  • オチ:西森のラストセリフ「お待たせしました お坊ちゃま」
  • 回収:そのセリフが伏線のようにラストに再登場

6. 笑いの源泉

  • ズラし:「感動的な別れ」の場面で宇宙人が表彰しだしたりする
  • 誇張:銃撃、爆発音、感情演技など全体的に大げさ
  • 構造遊び:映画の世界観を即興で構築し、演じながら壊す
  • 感情の暴走:大林の「感動をやりたい」が暴走し、西森も勝手に乗っかって変な展開に
  • 言葉遊び:宇宙人語・「ドロドロの手」など不条理ワードの連打

7. キャラのタイプと関係性

  • 大林:真面目に夢を語り、ハリウッド映画の世界観を丁寧に組み立てようとする。ネタ全体の進行や感動シーンを主導し、構造の秩序を保とうとする役割。ボケの暴走に戸惑いながらも、的確にツッコんで笑いの軸を整える。
  • 西森:設定を受けて参加しつつも、奇妙な言動で物語を次々に脱線させていく。「表彰状」「宇宙語」「寿司屋」など異物的ボケを即興で重ね、空気を乗っ取る。逸脱を繰り返すことで、ボケとして強烈な存在感を放つ。

8. 演技・パフォーマンス面

  • 西森:カニタイプのエイリアンの動き、異様な宇宙語、ドロドロの手、表彰状読み上げなど、肉体性と声の演技が圧倒的
  • 大林:ヒーロー演技、表情の真剣さがギャップとして笑いを生む

9. 客観的コメント

「ハリウッド映画」という誰もが想像しやすいジャンルを舞台に、漫才内即興演劇としてのコント化が見事。シーンの急展開・破綻を繰り返しつつ、「感動をやりたい」という軸がぶれないことで笑いが持続する。演技力と構成力、そして何より西森の“存在そのものの異物感”が笑いのコアを成す。


10. 最終コメント

このネタの魅力は、ありふれた夢——「ハリウッド映画に出たい」という妄想が、2人の手によって暴走し、変形し、破綻しながらも最終的に愛すべきカタチで着地する構造美にある。大林が提示する「理想のシーン」に西森が全力で乗っかることで、物語は勝手に肉付けされ、宇宙語やドロドロの手、表彰状という想定外の異物が次々現れる。にもかかわらず、大林の「演じ切りたい」気持ちは終始ブレない。西森の演技はただの奇抜ではなく、緩急の使い分け、テンポの裏切り、そして何より“奇怪な宇宙人”が芸として成立している。漫才とコントの中間地帯にあるこのネタは、笑いの即興性と構成性、両方の緊張感を孕んだ作品であり、その完成度は極めて高い。モンスターエンジンの真骨頂が詰まった傑作と言える。

【書き起こし】

(大林)どうも~ え~ 頑張ってやってますけどね やっぱりこういう仕事を してますけどね 僕の夢はね ここでとどまって ないんですよ
(西森)あっ そう
(大林)僕はね 映画に出たい
(西森)映画?
(大林)ただの映画ちゃいますよ ハリウッド映画
(西森)ハリウッド映画?
(大林)ええでしょう
(西森)まあ 可能性がゼロなワケじゃ ないですからね
(大林)出たい映画もあるんですよ エイリアンみたいな化け物を 僕が主人公で— こう ダダダダダッと 打ち倒していくような
(西森)むちゃ かっこええやん
(大林)CGを駆使したようなやつ
(西森)でもそれ 一応な コンビやから もし お前が主人公で 出れるってなったら 俺も もしかしたらチョイ役で 出れるかも分からん
(大林)そら 全然可能性あるよ ほな ちょっとやってみよ
(大林)ここに怪獣 化け物がおる なんだ あの化け物 気持ち悪ぃぜ バンバンバン!
(西森)なんだ ありゃ 片手で車投げてるじゃねえか こりゃあ えれぇ留学生が 宇宙から来たもんだぜ
(大林)うわ 危ねえ 車投げてきやがった ヒュ~ッ バン! 危なかったぜ バンバン!
(西森)ヘイヘイ 来いよ 来いよ そんなコントロールじゃ リトルリーグでも— エースになれねぇぜ ブーッ
(大林)車だ 車が突っ込んで… なんだ あいつ 人食ってやがるぜ 気持ち悪ぃ バンバン!
(西森)そんなおっさんよりも もっと うまいもん 食わしてやるよ こっち向きやがれ 偏食野郎が
(西森)お待たせしました お坊ちゃま 昼食の時間ですよ
(西森)ド~ン!
(大林)かっこええな お前
(笑い声)
(大林)かっこよすぎるやろ お前
(西森)ふつうにやっただけやけど
(大林)天才か お前は
(西森)じゃあ天才なんかな
(大林)“じゃあ天才なんかな”じゃないわ お前は 主人公 俺やから お前 エイリアンをして エイリアンを
(西森)ええっ?
(大林)エイリアンや 目立ってどうすんのや 俺より
(西森)あんだけ ちゃんと… こんなんか?
(大林)上手いな
(西森)このカニタイプでええか?
(大林)カニタイプなんか知らんわ そんなん
(西森)ほな やるんはええけど バズーカもないし 車も飛んでけえへんから もっと演技力のあるシーン やったほうがええ思うわ
(大林)勝手なシーン 作ったらええやん
(大林)俺が地球人やろ? お前が宇宙人や 倒したと 殺したいけどもな お前は生まれ育った星へ 帰るんだよって— 促すような感動のシーン やったらええがな
(西森)めっちゃ かっこええな (エイリアンのうめき声)
(大林)おい 化け物
(西森)シャッ!
(大林)ここは俺たちの星だ
(西森)シャッ!
(大林)これからお前は— 生まれ育った星へ帰るんだ
(西森)シャッ!
(大林)しゃべれや お前
(西森)しゃべってええねんな?
(大林)シャー シャー シャー シャー 分からんこと多すぎるわ しゃべるわ ブッ ゴッ ゲフゲフ…
(大林)おい 化け物
(西森)はい
(大林)しゃべり過ぎや お前 おもろいか そんな映画 考えや 自分で
(大林)おい 化け物 ここは俺たちの星だ これからお前は 生まれ育った星へ帰るんだ
(西森)我々は お前たち人間をなめ過ぎた
(大林)ああ そうだろう
(西森)我々に比べ はるかに 文明の低いお前たちは— 勇気という力を武器にし 勇敢に戦った そして自分たち 人間という種を愛し その愛の力で 見事 我々に勝利した
(大林)ああ そうだ
(西森)よって ここに… 表彰いたします
(大林)それ 何や?
(大林)それ 何や?
(西森)2008年 地球争奪選手権大会
(大林)あるんかい そんなん
(西森)会長 バケ・モノ
 (大林)名前 どうなってんねん
(西森)表彰状
 (大林)探さんでええわ お前は 帰れ 気持ち悪い
(大林)俺たちはもう お前たちと 戦いたいわけじゃないんだ
(西森)我々も戦わない
(大林)そうだろう じゃあ… お別れの握手だ
(西森)ブッシュ-ッ…
(大林)何もしない 大丈夫だ 人間はお別れするときに 手と手を差し伸べて— 握手をするものだ さあ 手を出せ
(西森)分かった ○△□※#$%&… ※#$%&○△! ○△□※#$%&…
(大林)気持ち悪いわ!(笑い声)
(大林)ドロドロの手 出してくんなよ お前は
(西森)せっかくの…
(大林)せっかくのやあれへん 帰れ! 帰れ 気持ち悪い
(西森)分かった
(大林)ああ
(西森)ピピッ ピピッ ピピッ ピカ-ッ! シュ-ッ H シュ-ッ O シュ-ッ N シュ-ッ A
(西森)ほな…
(大林)それ なんやねん? それ 何や?
(西森)ほな
(大林)“ほな”やない 地球来て何呼ぶんや お前は 宇宙船 呼んだんちゃうの? これ ピピピピッて…
(西森)宇宙船は お前が潰したから もうない
(大林)えらい怒ってんな お前 どうするんだ じゃあ?
(西森)この辺ですし屋でもする
(大林)無理や どうやって すし握んねん お前
(西森)○△□※#$%&…
(大林)やめとけ やめとけ! はやるか そんなすし屋 お前は 帰れ! 気持ち悪い
(西森)最後にひと言 言わせてくれ
(大林)なんだ
(西森)最期に我々が とどめを刺されたときの— あのセリフは絶対に忘れない
(大林)どんなセリフだ
(西森)“お待たせしました お坊ちゃま”
(大林)それ お前のセリフやんか
(大林)もう ええわ
(2人)どうも ありがとうございました

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