1. ネタ名と芸人名
- ネタ名:サンタクロースって何?
- 芸人名:ダイアン(津田篤宏・西澤裕介)
2. 役割構造(コンビ内の機能分担)
- ツッコミ主導型 × キャラ型
津田が終始“常識人”の立場でクリスマスの文化的知識を伝えようとするのに対し、西澤は「サンタクロースとは何かが分からない」という一点で、完全に“社会的な常識から外れたキャラ”としてボケを貫く。ツッコミが常識的な説明を積み重ねるスタイルであり、役割が逆転することはなく、構造は常に津田が主導している。
3. 型(構造・スタイル)
- 回収・伏線型 × メタ漫才型 × テーマ追求型
「サンタとは何か?」という一点を徹底的に掘り下げ、全体を通してその疑問に答え続ける構成。終盤で「実はサンタはいない」という真実を明かすことで、それまでのやりとりを“嘘の説明”として回収し、観客に大きな裏切りと笑いをもたらす。設定を使い捨てず、最後に意味づける点で極めて高密度な構造を持つ。
4. ネタスタイル(演技・テンポ・空気)
- ナチュラル会話型 × 言葉遊び・言語操作型 × 演技&空気重視型
二人の会話は自然なやり取りに見えるが、西澤の「ファナスティ」「知らんふり」などの言語操作が、津田のリアクションを引き出す燃料となる。ギャグではなく、言葉の綻びと知識のズレで構成される空気型の笑い。津田の熱量と西澤の静かな違和感が絶妙な温度差を生む。
5. 構成要素の流れ
- ツカミ:津田の「クリスマス楽しみ」に西澤が「おもんない」と否定から入る
- 展開:西澤がサンタクロースを知らないという異常な状況の提示
- クライマックス:「ファナスティ」連呼で津田のリアクションが頂点に
- オチ前:「実はサンタはおらんねん」というネタ全体をひっくり返す展開
- オチ:「ヨネスケはおる」で一気に現実に引き戻す脱力系エンディング
6. 笑いの源泉
- ズラし:常識を知っている前提が覆される(サンタを知らない/トナカイは知ってる)
- 構造遊び:「存在しないもの(サンタ)を一生懸命説明する」というギャグ構造
- 感情の暴走:津田の「ウソやろ!?」「ダッサ!」などリアルな怒りを通じた笑い
- 言葉遊び:「ファナスティ」の正体不明な言語反復と押し問答による攪乱
7. キャラのタイプと関係性
- 西澤:知識の欠落が笑いを生む“無知キャラ”でありながら、時に理屈っぽさや知識披露(トナカイ、フィンランド)で揺さぶりをかける
- 津田:一貫して常識を代弁し、混乱や怒りを露わにしながらも軸を崩さない“リアクティブなナビゲーター”
ふたりの関係性は明確で、ツッコミとボケの機能が崩れることなく、終始津田が主導権を握っている。
8. 演技・パフォーマンス面
- 津田:大声、鋭い間合い、指さしなどの身体的表現を通じて感情を爆発させ、観客の感情移入を誘う
- 西澤:抑揚を抑えた話し方で、不穏な空気や“何かを知らない人”の異様さを演出。トナカイに関する知識披露などで一時的に主導権を取る緩急も魅力。
9. 客観的コメント
このネタは、「サンタクロースを知らない」というたった一つの異常性を起点に、津田の説明と西澤のとぼけた返しで構築されるロジカルなズレ漫才である。笑いは知識の非対称性から生まれ、西澤の“無知なふり”はただのボケではなく、津田の言語的労力を極限まで引き出す装置として機能している。ネタの途中で観客は津田の側に立ち、「なんで分からへんねん」と一緒に突っ込む心理状態に誘導される構造が秀逸。終盤で全ての説明が“嘘だった”と明かされる展開は、構造へのメタ的な裏切りとして強烈な笑いを生み出す。
10. 最終コメント
このネタは、クリスマスという万人が共有する文化的前提を逆手に取り、「サンタクロースとは何か」をめぐる不条理な対話を通して、常識と非常識の境界線を鮮やかに揺さぶる。西澤は“知らないこと”を武器に津田を翻弄し続け、津田はその都度、言葉と感情で説得しようと奮闘するが、やがてその労力自体が笑いの主成分へと転化する。特に「ファナスティ」という無根拠なワードを起点とした攻防や、「実はサンタはいない」という回収は、漫才の持つ“形式的真実”をあえて崩す大胆さに満ちている。ツッコミが終始常識の側にいながらも、笑いの軸を握り続ける構造美があり、ダイアンの芸風の真骨頂が詰まった傑作だ。
ただし、序盤の“クリスマスおもんない”というやり取りにやや時間を割きすぎた印象もあり、その時間に見合うだけの笑いを序盤で確保しきれなかった点は惜しまれる。とはいえ、中盤以降のスイッチの入り方、会話の転調、論理と情動のせめぎ合いのなかで、ダイアンらしい構造の巧みさと空気の緻密さがしっかりと立ち上がっている。最後までツッコミが常識の位置を保ち続けるという設計も秀逸で、ズレの応酬がもたらす知的な笑いが印象に残る一作である。
【書き起こし】
(津田)どうも~ どうもダイアンです よろしくお願いします
(西澤)ありがとうございます
(津田)頑張っていきましょう ゆうてもね もうすぐ クリスマスじゃないですか 楽しみやな思てね
(西澤)いや クリスマス おもんないやろ
(西澤)俺 イマイチ何してんのか よう分からんし 子供のころから楽しいと 思った記憶 一切ないねん
(津田)なんでやねん お前
(津田)子供のころいうたら クリスマス むっちゃ好きやんか サンタクロースのことも 好きやしやな お前
(西澤)ん?
(津田)いや いや いや… まあ 確かに この歳で恥ずかしいけども みんな サンタクロース 好きやんか お前も サンタクロース 好きやろ?
(西澤)サンタクロースって なんやねん?
(津田)えっ?
(西澤)今 クリスマスの話 してるやん
(津田)だからサンタクロースの話 してんのや サンタクロースや サンタクロース サンタクロースや…
(西澤)だからサンタクロースって なんやねん
(津田)えっ ちょっと待って お前 サンタクロース知らんの?えっ なんで?
(津田)おかしいやん 今 クリスマスの話 してたやん なんでサンタクロースだけ 知らんの?
(津田)ありえへんよ どんなクリスマスしてたん それ
(津田)だっさ!
(西澤)指さすな
(津田)どんな人生 それ
(西澤)指さすな
(津田)ありえへんて ウソやろ
(西澤)指さすな 指やめとけ
(津田)ウソやろ?
(西澤)指さすな 指はやめとけ
(津田)知ってるやろ ウソやろ? なんでサンタクロース知らんの
(西澤)指やめとけ お前 ファナスティ知ってる?
(津田)えっ?
(西澤)お前 ファナスティ知ってる?
(津田)ファ… ファナスティ?
(西澤)ファナスティ お前 ファナスティ知ってるやろ
(津田)指さすなよ
(西澤)なあ ファナスティ
(津田)なに ファナスティって
(西澤)ファナスティ知ってるやろ
(津田)なんやねん ファナスティ
(西澤)ファナスティや
(津田)ファナスティって 何や
(西澤)ファナスティ知ってるやろ
(津田)ファナスティ…
(西澤)ファナスティ知ってるやろ
(津田)ファナスティって なんやねん
(西澤)ファナスティ 知ってるやろ
(津田)ファナスティって何やの 教えろよ言うてんのや
(津田)ファナスティ
(西澤)ファナスティ知ってるやろ ファナスティって 何やの言うてんのや お前
(西澤)これをずっと 言われてるようなもんやで
(津田)そういうこと? ああ そういうことね…
(西澤)お前 どんな気持ちやった 今?
(津田)メッチャ腹立ったわ
(西澤)後半 怒ってたよ
(津田)確かにな
(西澤)ファナスティって何?
(津田)お前も知らんのかよ どうせえっちゅうねん
(西澤)ちょっと説明してぇや
(津田)えっ?
(西澤)サンタクロース
(津田)おじいちゃんや
(西澤)おじいちゃん?
(津田)白いヒゲ生やして 小太りで 赤い服着たおじいちゃんや
(西澤)えらい派手やな ファッション的にどうやねん
(津田)ええねん 別に
(津田)で クリスマスの前の日に— みんなの家にプレゼントを 届けに来てくれるねん
(西澤)なんで?
(津田)なんでって… そういうことなってんねん そういうことをしてくれる人やねん
(西澤)いや いや いや… もらわれへん もらわれへん 怖い 怖い 怖い…
(西澤)理由がないやん
(津田)怖ない 怖ない
(西澤)知らん人からいらん いらん
(津田)怖ない 怖ない…
(西澤)いらん いらんって
(津田)優しいおじいちゃんやから
(西澤)それ ボケてはんの?
(津田)ボケてないわ アホ ボケてそういうことやってんの ちゃうわ お前
(西澤)絶対ボケてるやん
(津田)なんでやねん
(西澤)俺 もう赤い服着てる時点で おかしい思ってたもん
(津田)なんでやねん みんな 赤い服着てるやないか
(津田)だから みんなの家にプレゼントを 届けに来てくれんねん
(西澤)だから なんで来んねんや 勝手に それ 何なん?
(西澤)ヨネスケなん?
(津田)ヨネスケじゃないわ ヨネスケも 勝手に来よるけどもやな
(西澤)じゃ 何なんや?
(津田)サンタクロース プレゼントくれるやろ?ヨネスケ 何かくれんのか お前?
(西澤)まあ 何もくれへんけどやな
(西澤)ヨネスケは逆に おかず取っていきよるからな
(津田)そやろが お前
(津田)だから全然ちゃうねん
(津田)サンタクロースは背中に 白い大きな布の袋持ってるわ そこにいっぱい プレゼント入ってはんの
(西澤)でも そんな大荷物やったら 移動とか大変やな 電車乗っても キュッキュなってまうやん
(津田)いや そんなん乗らへんねん ソリに乗ってくんねん
(西澤)なんでやねん
(津田)決まってんねん ソリに乗ってくるって
(津田)ほんでな そのソリを 引っ張ってる動物おんのやけど 何つってええんかな…
(津田)角のものすごい大きい 鹿みたいな動物がおんねんか 毛 フカフカで
(津田)俺もよう分からんのやけど とりあえずな ものすごい角が大きい…
(西澤)トナカイのこと?
(津田)トナカイ知ってんの? なんで?
(西澤)あのツンドラ地帯に住んでる あのトナカイやろ?
(津田)そうそう そう…
(西澤)あの北アメリカで 別名カリブーといわれてる…
(津田)メチャ詳しい
(西澤)そやな トナカイってな 雪に足が沈まんようにできてるし すごい分厚い毛皮を着てるから 全く寒くない
(西澤)そやな まあまあ トナカイやったら… 引けるでしょう
(津田)なんで上から言うてんねん お前は
(津田)なんで上からやねん お前 おかしいやろが お前
(津田)ええ?
(西澤)まぁ それはええけど どっから来んの? どこに住んでるん?
(津田)フィンランドや
(西澤)外国人なん?
(津田)そうや
(西澤)なんでそんな重要なこと もっと最初に言うてくれへんのや
(津田)重要ちゃうわ こんなもん
(西澤)メチャメチャ重要や フィンランドなんか ピンとけえへんよ お前 ソリで来れる距離ちゃうやん
(津田)来れんねん
(西澤)何月に家 出なあかんの 8月ぐらいに出とるやろ
(津田)来れんねん ソリで空飛んでくんのや
(西澤)しっかりせぇよ お前
(津田)しとるわ
(西澤)お前な フィンランドから大阪まで ソリで来るようなおっさんな 着くころにはズタボロやぞ
(津田)大丈夫や
(西澤)絶対ケガしとるわ
(津田)来てくれんねん
(津田)ほんで子供たちは 枕元に靴下置いとくねん
(西澤)なんでや?
(津田)そこにプレゼント 入れてくれへんねん
(西澤)それ 何なん? プレゼントって 縦笛とか長ネギなん?
(津田)そんな靴下に入りそうなもん ちゃうで アホ
(西澤)子供はもっと ラジコンとか欲しい…
(津田)くれんねん ちゃんと
(西澤)どうやって入れんのや
(津田)なんとか入れてくれはんのや アホ
(津田)くれんのや
(西澤)そう くれんのか
(西澤)俺 革ジャン欲しいねんけど それ くれんのか?
(津田)くれるんちゃうか
(西澤)ホンマやな?
(西澤)24日の夜やな?
(津田)せや
(西澤)絶対 起きとこ
(津田)えっ
(西澤)俺だけや 知らんかったん
(西澤)なんでもっと早う 言うてくれへんの お前
(西澤)俺が革ジャン欲しいの その人に伝わってる?
(西澤)初対面 ムチャムチャ緊張するやん…
(津田)ちょっ…
(西澤)風呂ぐらい沸かしといたほうが ええやろ?
(津田)俺も大分 熱うなってんけど…
(津田)ちょっと聞いてくれる?
(津田)あんな…
(津田)今 説明した サンタクロースおるやろ?
(津田)これ ホンマは… おらへんねん
(笑い声)
(西澤)えっ?
(西澤)えっ… ええ?
(西澤)どういうこと?
(津田)ホンマは… おらへんねん
(西澤)怖い話?
(津田)違う 違う 違う… 怖い話ではないねん
(津田)違うねん…
(西澤)妖怪プレゼント配り?
(津田)違う 違う 違う
(津田)そういった話ではないねん
(津田)空想上のおじいちゃんで ホンマはそんな人 おらへんねん
(津田)お前が ガッってきたから
(西澤)いや いや いや…
(西澤)なに いまさら お前…
(津田)ごめん
(西澤)何してんの お前
(津田)ごめん
(西澤)えっ プレゼントは?
(津田)ない
(西澤)トナカイは?
(津田)来うへん
(西澤)空飛ぶソリは?
(津田)ない
(西澤)最悪やん 何なん お前
(津田)ごめん ごめん
(西澤)もう何も信用でけへんわ
(津田)ごめんな
(西澤)お前 どうせ あれやろ お前…
(西澤)ヨネスケもおれへんのやろ
(津田)ヨネスケはおる
(津田)もう ええわ!
(2人)どうも ありがとうございました
