【M-1グランプリ2005】ブラックマヨネーズ『格闘技を習うなら』分析/書き起こし

1. ネタ名と芸人名

  • ネタ名:格闘技を習うなら
  • 芸人名:ブラックマヨネーズ(吉田敬・小杉竜一)

2. 役割構造(コンビ内の機能分担)

  • 逆転型+リアクター主導型
    吉田がボケ・小杉がツッコミだが、実質的には吉田の屁理屈を小杉が真面目に拾いまくる構造。小杉の「なんでやねん!」ではなく、「ならこうしたら?」という柔軟な提案リアクションが主導権を握る形で進行しており、思考と妄想のキャッチボールによってネタが膨張していく。

3. 型(構造・スタイル)

  • テーマ追求型+構造破壊型+ワールド構築型
    「格闘技を習うべきか?」という一見真面目なテーマを起点に、空手→相撲→小熊→冷凍庫と、どんどん逸脱・拡大しながら独自の世界が構築されていく。一貫した目的(ケンカ対策)を持ちながらも、最終的には「皮膚科の先生に助けてもらう」というズレ落ちへ向かう構造破壊。

4. ネタスタイル(演技・テンポ・空気)

  • ナチュラル会話型+演技&空気重視型
    特に吉田の「説得力ある屁理屈」と小杉の「やや本気トーンの提案」によって、まるで実際の友人同士の会話のような自然さを保ちつつ、どんどん非現実に逸れていく。緊張と緩和の波が非常に巧妙。

5. 構成要素の流れ

  • ツカミ:街で絡まれる→格闘技必要では?
  • 展開:柔道→空手→相撲→ケンカに押し出し→信号問題
  • クライマックス:小熊飼育→成長→熊の復讐→冷凍シャケ
  • オチ:「皮膚科の先生に助けてもらう」
  • 回収:熊の話、信号の話などは完全には回収せず、あえて放置することで混沌を印象付ける

6. 笑いの源泉

  • ズラし:「格闘技」→「熊とのケンカ」
  • 誇張:「押し出しで堺まで」「熊がピンポン鳴らす」
  • 構造遊び:「せいや」問題→黙って2発目→観客の目線 vs 演者の目線
  • 感情の暴走:吉田の「絶対嫌やねん」から始まる論理的感情の暴走
  • 言葉遊び:「道場に迷惑」や「赤信号のフェイント」などの意外な視点

7. キャラのタイプと関係性

  • 吉田:屁理屈型ボケだが、自意識過剰で傷つきやすいキャラ。ツッコミ的要素もあるが、ネタ内では自己防衛と妄想の拡張担当
  • 小杉:提案型ツッコミ。暴走する吉田を止めるのではなく、付き合って導いていくタイプ。「熊飼えや!」のような逆ボケも入れ、ボケとツッコミが並列で回るスタイル

8. 演技・パフォーマンス面

  • 吉田:感情の波が激しく、言葉選びにこだわるスタイル。声のトーンの上げ下げと間の取り方が抜群。細かい違和感(例:「せいや」問題)への着眼が鋭い。
  • 小杉:強めの口調ながら全体を包み込む温度感を持ち、押し出すボケにも誠実さがにじむ。手振りや表情で“本気度”を見せて、吉田の妄想にリアリティを加える

9. 客観的コメント

このネタは「ケンカ対策」という一見現実的なテーマを、無限の屁理屈と想像力で奏でる構造的コント漫才である。観客は論理が破綻していく快感と、「自意識の暴走が生むズレ」による共感にも近い笑いを得る。哲学的にも「強さとは何か」「備えるとはどういうことか」が浮かび上がってくるあたり、非常に完成度が高い思想性のあるネタと言える。


10. 最終コメント

ブラックマヨネーズの本ネタは、格闘技という現実的テーマから始まり、吉田の自意識と妄想、そして小杉の柔らかなリアクションによって、気付けば「熊を飼う」「シャケを冷凍庫に常備する」という非現実へとワープしていく。注目すべきは、吉田の論理が常に“理にかなっている”ように聞こえること。それを小杉が真面目に受け止め、さらなる混沌を呼び込む構造は、まさに笑いの渦を意図的に生成する知性の漫才である。

吉田のキャラは、ボケではなく「防衛的リアクター」とも言える特殊型。ツッコミ的視点で自分を守りつつ、より笑いを生む屁理屈を積み重ねていく。その知的暴走を、小杉が包み込みながらエスカレートさせていく関係性は、他の漫才師にはないブラックマヨネーズ特有の“安心感”を生む。語彙の選び方、間の妙、感情のさざ波…全てが高水準で噛み合った、まさに“話芸の極地”と言える傑作である。優勝に相応しい漫才。


【書き起こし】

(小杉)どうも よろしく お願いします
(吉田)僕ら こういう仕事 やってますとね
(吉田)街で絡まれたり っていうのも—
(吉田)あるんですよね
(小杉)嫌ですけどね
(吉田)だから いざというときのためにね—
(吉田)格闘技の1つでも
(吉田)習っといたほうがいいと思う
(小杉)まあ ケンカは よくないけど
(小杉)男は強いに越したことないからね
(吉田)そうそう だから どんな格闘技が
(吉田)ええかなと思って
(小杉)柔道とかええんちゃう?
(吉田)柔道な
(小杉)投げ技も 締め技もあるし頑張ったら強なれるよ
(吉田)いや でもな~
(小杉)なんや?
(吉田)柔道って 畳に顔
(吉田)こすりつけられるやろ?
(小杉)寝技のときにやるね
(吉田)これ以上 ブツブツ潰れんのは
(吉田)ちょっと嫌やねんな 俺
(吉田)なんか 相手の道着も
(吉田)汚してしまいそうで—
(吉田)ちょっと悪いし
(小杉)道場に迷惑もかかるわな
(吉田)まあ そこまで迷惑はかからへんけど
(吉田)柔道以外がええわ
(小杉)空手とかええんちゃう?
(吉田)あっ 空手な
(小杉)俺もやってたし
(小杉)K-1とかで活躍してる武蔵むさし選手
(小杉)あれも空手出身やんか
(小杉)ええやん 空手
(吉田)でもな~
(吉田)空手て“せいや”って言うときに…
(吉田)パンチ出すときに
(吉田)“せいや”って言わなあかんやろ?
(小杉)気合い 入れるときは
(小杉)声 出さなあかんよ
(吉田)ほな 街でパンチ出すとき
(吉田)“せいや”言うて
(吉田)かわされたら ちょっと
(吉田)かっこ悪いなと思ってね
(小杉)それを2発目で倒したら—
(小杉)チャラなるくらい
(小杉)かっこええやないかい
(吉田)でも お前 1発目
(吉田)“せいや”言うて
(吉田)かわされてんねんから
(吉田)2発目も同じテンションで—
(吉田)“せいや”とは 言われへんやん
(小杉)ほな 2発目は黙って倒せ
(小杉)ほなら チャラなるくらい
(小杉)かっこよくなるやんけ
(吉田)そんなことしたら
(吉田)“あの人 1発目 せいや言うて
(吉田)空振りしたん 気にして—”
(吉田)“2発目 黙ったはる”と
(吉田)思われたら…
(小杉)考え過ぎや
(小杉)人のケンカで “あいつ せいや
(小杉)2回目 言うかな?”って
(小杉)見たことあんの? お前
(吉田)いや 見てるほうと やってるほうは
(吉田)結構 温度差があんねやから
(小杉)ほな 相撲でも習えや!
(吉田)お前 30越えてから相撲 習い出すヤツ—聞いたことあんのか?
(小杉)どっかの大学の相撲部 行って
(小杉)“お願いします”でやってこいや
(小杉)しゃあないやんけ
(吉田)ほな 仮に 相撲 習ったとせいや
(吉田)でも 相撲なんて
(吉田)技 いっぱいあんねんぞ
(吉田)ほな 得意な技 苦手な技と
(吉田)出てくるやろ
(小杉)出るよ
(吉田)俺の得意な技が—
(吉田)万が一 押し出しに
(吉田)なってしまったらどないすんねん
(小杉)ええがな! ええ押し出し
(小杉)自分なりの押し出しを磨けよ
(吉田)ほんなもん 梅田うめだで始まったケンカ
(吉田)堺さかいまで行かな 終わらへんやん
(小杉)どこまで押し出すねん
(小杉)どこまで押し出し続けんねん お前
(小杉)ほんなもん 真ん中の難波ぐらいで
(小杉)もう この辺まで
(小杉)押し出されてんのやから—
(小杉)負けでええやろ?
(小杉)って説得せえや
(吉田)最後にひと言 添えなあかんケンカ
(吉田)って なんやねん お前
(小杉)嫌やろ? 最後まで行くんは
(吉田)ほな仮に 難波までとしてもやな
(吉田)途中 赤信号いっぱいあるやろ
(吉田)その赤信号の間
(吉田)気まずいやんけ なんか
(小杉)俺は いつでも お前を車道に
(小杉)押し出す気はあるぞって感じで—
(小杉)カッカッてやったら
(小杉)ハッハッてなるやないかい
(小杉)フェイントをかけろ
(吉田)何個目かの赤信号で
(吉田)“あっ こいつ 車道に
(吉田)押し出す気はないな”ってバレるわ
(小杉)ほな もう前の赤 諦めて
(小杉)こっちの青に押し出していったら
(小杉)ええやないかい
(吉田)そんなん 繰り返したら
(吉田)俺 全然知らんとこ行くやないか
(小杉)熊でも買えや ほんなら!
(吉田)どういうことやねん?
(小杉)小熊を買こうてくんねん
(小杉)小熊と毎日 ケンカすんねん
(小杉)小熊やったら
(小杉)頑張ったら勝てるやろ
(小杉)毎日やっとったら
(小杉)小熊がデカなって
(小杉)お前も 熊ぐらい強なっとるわい
(吉田)お前 人間以外の動物の成長の早さ
(吉田)見くびんなよ
(小杉)何で怒られてんねん
(小杉)何で怒られてんねん
(吉田)あいつら1日で思ったより
(吉田)成長しよんねん
(吉田)今日勝ったからって
(吉田)明日も勝てるとは限らへん
(吉田)大体 負けるときは
(吉田)死ぬときやからな
(小杉)3年ぐらいやって
(小杉)負けるなと思ったら—
(小杉)動物園に
(小杉)引き取ってもうたらええやん
(吉田)お前 3年も
(吉田)意味なく殴り続けた熊—
(吉田)出てきてでも
(吉田)何か仕返しにきよるわ
(小杉)ピンポン鳴らしても
(小杉)開けへんかったらええやないかい
(吉田)熊がピンポン鳴らすんかい
(小杉)つぼか何か買うて
(小杉)ハチミツ入れときゃ
(小杉)ドア 蹴破ってきても—
(小杉)“すいません”て
(小杉)ハチミツあげたらええやん
(吉田)そこは普通 まずシャケやろ
(小杉)知らんがな!
(小杉)ハチミツとシャケの
(小杉)てんびんは知らん 俺は
(吉田)ハチミツは
(吉田)シャケ食うたあとやないか
(小杉)ほな 熊買うたときに
(小杉)一緒に冷凍庫も買うてこい
(小杉)ほんで 帰りに
(小杉)1本丸々 冷凍シャケ買ってこい
(吉田)おい こら!
(小杉)イタタ!1日2発も どつくな
(吉田)なんや お前 冷凍庫にシャケて
(小杉)襲われたないんやろ
(小杉)出さなあかんやんけ
(吉田)後輩が遊びに来て
(吉田)“吉田さん シャケの鍋でも
(吉田)しましょうや”言われたら—
(吉田)何て言うたらええねん?
(小杉)ほんなんやったら
(小杉)スーパーで
(小杉)シャケ買っといたらええやないかい
(吉田)俺 どんだけ
(吉田)シャケ好きな先輩やねん
(吉田)まさか 熊を薦められるとはな
(吉田)もう ええわ
(吉田)お前に相談したんが間違いや
(吉田)もう俺 格闘技なんて
(吉田)習わへんわ もう
(小杉)ほな これから絡まれたら
(小杉)どうやって切り抜けんねん
(吉田)いつも行ってる
(吉田)皮膚科の先生に助けてもらう
(小杉)何でもかんでも無理やもう ええわありがとうございました

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