【M-1グランプリ2005】チュートリアル『バーベキュー』分析/書き起こし

1. ネタ名と芸人名

ネタ名:バーベキュー
芸人名:チュートリアル(徳井義実・福田充徳)


2. 役割構造(コンビ内の機能分担)

ツッコミ主導型(形式) × ボケ主導型(実質) × 感情型ツッコミ × リアクター型
形式的には福田が常識的視点からネタを整える「ツッコミ主導型」だが、実質的には徳井が終始テンションと論理の暴走でネタを牽引する「ボケ主導型」。福田はリアクターとして淡々と対応しつつも、時に「しばくぞアホ」「気持ち悪い」など感情の揺れを込めた応答を見せる“感情型ツッコミ”。このコンビにおける典型的な役割分担が、ネタ全体に安定感と振れ幅の両方をもたらしている。


3. 型(構造・スタイル)

テーマ追求型 × ワールド構築型 × フレーズ反復型
日常的な「バーベキュー」というテーマを異常なまでに深堀りし、独自の“バーベキュー観”を構築していく。特に「串の具材の順番」に異様なこだわりを見せ、ピーマン、エリンギ、ホタテといった並びに対し、自作の美学と世界観を次々に開陳する過程がワールド構築型。さらに「順番は?」「放り込んでくれ」「ニューヨークスタイル」などの反復によってネタが円環的に回転していく。


4. ネタスタイル(演技・テンポ・空気)

演技&空気重視型 × ナチュラル会話型 × 言葉遊び・言語操作型
漫才的なリズムではなく、会話を基盤としたナチュラルな口調とテンポ。徳井のテンションの上げ下げがリズムの起伏を生み、福田はそれに冷静に応じることで空気を安定させる。会話の中で「ごん合」「近代バーベキューの父」「オニオン」など、独自の言葉の切り口や“勝手な固有名詞”が言語操作的な面白さを形成。


5. 構成要素の流れ

  • ツカミ:バーベキューという普通の希望に対し、「覚悟があるか?」という非対称な返しで笑いを誘発
  • 展開:米の炊き方、具材の順番などへ異常なこだわりを展開し、テーマがどんどん逸脱
  • 言葉遊び:「ニューヨークスタイル」「トーマス・マッコイ」「くれくれ」など妄想がピークに
  • オチ:「誰も俺とバーベキュー行ってくれへん」で自身の孤独に回収し着地
  • 回収:再び具材の順番に戻ることでネタがループ的に閉じる構造美を形成

6. 笑いの源泉

  • ズラし:「バーベキュー」に対する過剰な情熱と常識からの乖離
  • 誇張:「順番がダサい」「80年代や」「ディスコブーム」など時代や文化を無理やり接続
  • 構造遊び:徳井の持論→福田のツッコミ→徳井がさらに捻る、のループ構造が持続
  • 感情の暴走:「放り込んでくれ」「くれくれ」など、異様な執着を見せる高揚感
  • 言葉遊び:「ごん合」「おナス」「トーマス・マッコイ」など言葉の選びとネーミングの妙

7. キャラのタイプと関係性

  • 徳井:自意識過剰かつ空想過多な“情熱型妄想ボケ”、憑依型ボケ
  • 福田:一歩引いて現実的視点から見守る“リアクター型ツッコミ”
    → 関係性としては、徳井が無限に広げようとする風船を、福田が「割らないように押さえ続ける」構図。ツッコミながら笑いの導線は任せており、ボケの熱量に依存する関係性が際立つ。

8. 演技・パフォーマンス面

  • 徳井:声の緩急、唐突な激高、テンションの段階的上昇がスリリングな空気を生む
  • 福田:冷静さの中に「困惑」「イラ立ち」「諦め」がじわじわとにじむ、リアルな演技力
  • 徳井の“ハマり込み”演技に対し、福田の“淡々とする現実感”が舞台上で絶妙なバランスを生む

9. 客観的コメント

このネタの最大の魅力は、日常の中にあるごく普通の行為──バーベキュー──を、狂気じみた情熱とこだわりで非日常へと変貌させる力にある。徳井が展開する“思考の飛躍”や“論理の脱線”は一見無秩序に見えながら、すべて福田という制御装置を前提に成立している。笑いの源泉は一貫して「ボケの異常性」と「ツッコミの冷静さ」のギャップにあり、それを極限まで引っ張りながら破綻させない技巧は非常に高度。観客は「何をそんなに…」という戸惑いと共に、暴走の世界に引きずり込まれる快感を味わうことになる。


10. 最終コメント

チュートリアル「バーベキュー」は、常識的テーマに対して非常識な情熱を注ぎ込み、平凡な題材を狂気の寓話へと変換する“構築型漫才”の到達点である。徳井は「串の順番」を問うだけで膨大な妄想世界を広げ、その論理と感情の暴走は時に観客を置き去りにしかねないほどだ。しかし、福田のリアルな反応がそれを現実につなぎ留め、ツッコミとしてだけでなく“ネタの地平を整える存在”として機能する。特に印象的なのは、「くれくれ」「放り込んでくれ」といった狂気的なフレーズの反復が笑いの中に不穏な詩情を孕んでいる点だ。これは単なる“ボケとツッコミ”ではなく、異常と常識が一対となって動的にせめぎ合う二重構造の芸であり、観る者に“普通の中の異常”を体験させる。近年の漫才の中でも、構造美・情熱・不条理のバランスが極めて高い完成度で統合された作品である。M-1史上でも伝説的な傑作とされている!


【書き起こし】

(福田充徳)チュートリアルです。よろしくお願いします。突然なんですけどね、ちょっとバーベキューに行きたいなと思いまして。
(徳井義実)バーベキューに行きたい?
(福田)ええ、ちょっと行ってみたいなと。
(徳井)ということは、それなりの覚悟あってのことか?
(福田)なんでやねん。そんなもん何の覚悟もしてないよ。
(徳井)覚悟をしていない?バーベキューに行くのにか?
(福田)はい。
(徳井)お前みたいなヤツがおるからな、暇なカップルが朝からパチンコ行きよんやないか。
(福田)俺関係ないやないか。知らんがなそんなもん。
(徳井)あいつら他に何かあるやろ?
(福田)好きでやったはんねんから。それはええがな。
(徳井)バーベキューなんてお前な、知識、経験、これ必要なんやからな。
(福田)そんな大層なもんやないやろ?
(徳井)大丈夫か?お前。どうせお前な、バーベキュー行ってな、あの飯盒か何かでご飯か何か炊くにゃろ?
(福田)炊くよ。
(徳井)炊くにゃろな~。
(福田)なんでそんな楽しそうやねん。炊くよ、そりゃ米ぐらい。
(徳井)炊きそう。
(福田)どういうことやねん。
(徳井)もう2合でええとこ、5合炊きそうや。
(福田)しばくぞアホ。
(徳井)ごん合炊きそうや。
(福田)5合でええやろ。「ごん合」言うな。
(徳井)ちゃんとお前、米の洗い方とか知ってんのか?
(福田)なんとかなるやろ、あんなもん。
(徳井)ちゃんとお前、こうシャッシャッシュッみたいな。そんなんあんねんから。
(福田)そうなん?
(徳井)言うたらもう、猫かわいがり過ぎて「んん~!」なるみたいな。
(徳井)よう分からへん。なるやろ?
(福田)どんな米の研ぎ方やねん。よく分からないですけど。
(徳井)練習しとけしとけ。お前のはもう皿洗い過ぎて「もうこのバイト嫌や~」ってなってる。
(福田)お前のさじ加減やないか。
(徳井)「でも原付買うためやしな~」ってなってるんや、お前は。
(福田)何のために一生懸命働いてんねん、俺は。
(徳井)あとお前な、バーベキューでな、串にこう具材を刺していくやろ?
(福田)え?うんうん。
(徳井)この順番どうすんねん、順番は。
(福田)順番ってなんやねん。
(徳井)だから~!串に具材を刺す順番や。
(福田)そんなイライラすんなや。
(徳井)順番や、この順番。
(福田)順番なんか適当でええやんけ。
(徳井)適当でええ?
(福田)うん。
(徳井)お前みたいなヤツがおるからな、小学生は半笑いで避難訓練しよんやないか。
(福田)俺知らんやないか、そんなもん。知らんやんそんなん。
(徳井)あいつら災害の怖さをなんも分かっとらへんのや。
(福田)そんな必死では…。
(徳井)だから~!
(福田)イライラすんなって、もう。
(徳井)じゅ…じゅ…順番どうすんねん、順番は。
(福田)だから適当でええやんけ。肉、ピーマン、玉ねぎ。
(徳井)ダサッ!
(福田)なんで?
(徳井)古っ!
(福田)古いも新しいもあらへんやろ。
(徳井)肉…お前それ80年代やんけ。
(福田)どこら辺がやねん。
(徳井)ディスコブームが到来しとるわ。
(福田)何のことやねん。
(徳井)違う、物事には流行りがあんねんから。今の流行りで言うたら最初はピーマンからや。
(福田)いや聞いたことないけど。
(徳井)流行りで言うたらピーマン、シイタケ、エリンギ、玉ねぎ、ホタテとかや、な?
(福田)「な?」って言われても困りますよ。
(徳井)ちょっとええやろ?
(福田)全然ピンとこうへん。
(徳井)ちょっともう笑えてきたやろ?
(福田)全く笑てませんけど。
(徳井)あとな、流行りで言うたらピーマン、玉ねぎ、玉ねぎ、玉ねぎ…。
(福田)玉ねぎばっかりやないか。
(徳井)玉ねぎ。
(福田)また刺すの?
(徳井)オニオン。
(福田)玉ねぎやないか。結局玉ねぎだらけの串やないか。
(徳井)こういう流行りがあんねんから、その流行りを吸収した上で、今度はお前のオリジナリティーと合わして、ええ感じにミックスした順番を考えたらええやんけ。
(徳井)はよいけよ、はよいけよ。
(福田)お前がずっとしゃべっとったんやないか。ピーマンからが流行りやねんな?
(福田)ピーマン、ウインナー、鶏肉、トウモロコシ、ホタテ。
(徳井)おお~、ええやないかお前。
(福田)よかったんかい。
(徳井)え~?
(福田)全然感覚分からへんけど。
(徳井)お…お前初めてか?
(福田)いや初めてや。適当に言うただけやで。
(徳井)初めて考えたんか?
(福田)なんでテンション上がってんの?
(徳井)お前それニューヨークスタイルやないか。
(福田)どこら辺がやねん。
(徳井)近代バーベキューの父、トーマス・マッコイと一緒やないか。
(福田)そいつ誰やねんおい。知らんよ。
(徳井)なんでお前ニューヨークスタイル知ってんねん。
(福田)適当に言うただけや。
(徳井)外人の連れおんのけ?
(福田)いるかおい。
(徳井)なに人の連れおんねん?
(福田)おらへん言うてんねん。
(徳井)どこで知り合って…。
(福田)いない言うてんねん。
(徳井)そうか。
(福田)うん。
(徳井)お前やっぱ外人の連れおるやろ?
(福田)ノリしつこいって。
(徳井)なあ?
(福田)しんどいわ、お前のノリ。
(徳井)大丈夫、俺劣等感感じひんから。
(福田)適当に言うただけやから。
(徳井)ホンマか。ちょっと…もっとお前の教えてくれ。
(福田)だいぶ気持ち悪いな、お前。
(徳井)ちょっとくれくれ。
(福田)くれって何?
(徳井)放り込んでくれ、放り込んでくれや。
(福田)どこが評価されたんか全然分からへん。
(徳井)早く早く、くれくれ。
(福田)ピーマン。
(徳井)うん。
(福田)エリンギ。
(徳井)うわっ、そうやろ~?すごいな。
(福田)トウモロコシ。
(徳井)おっ、粒々感か。
(福田)トウモロコシ。
(徳井)えっ、トウモロコシを?
(福田)鶏肉。
(徳井)うん…。うわ~やめとけやめとけ。
(福田)なんでや?
(徳井)もうやめとけ。これ以上いったらおかしなるから。
(福田)おかしなるって何がや。
(徳井)これで十分やねんから。
(徳井)ほな逆にな、今思てたやつ言ってみ?仮に言ってみ?
(福田)鶏肉、ナスビ。
(徳井)おお、ええな。
(福田)どないやねん!
(徳井)ええな。
(福田)よかったんかい。
(徳井)おナスやったら大丈夫やな。
(福田)おナスって言うなアホ。
(徳井)おナスがすごいんか、お前がすごいんかどっちや?
(福田)俺はなんもすごないし、おナスもすごない。
(徳井)すごいやんけ。お前ホームページとかあんのけ?
(福田)ありませんけど。
(徳井)バーベキュー専門のホームページやってない?
(福田)やってない。
(徳井)くれくれくれ。
(福田)え~!
(徳井)放り込んでくれや。
(福田)気持ち悪い、もう!え~っと、ほな…。ピーマン。
(徳井)おう。
(福田)ウインナー。
(徳井)それがな~。
(福田)トウモロコシ。
(徳井)うおっ。
(福田)レンコン。
(徳井)うん!
(福田)エリンギ。
(徳井)うん。
(福田)エビ。
(徳井)あかん!
(福田)なんで?
(徳井)僕エビ嫌い!
(福田)知らんがな、そんな理由。
(徳井)ちょっと変えてくれ。
(福田)もうええ、もうええ、もうええわ!バーベキューの串の順番なんか何でもええねん!
(徳井)諦めるんか。
(福田)おう。
(徳井)お前みたいなヤツがおるからな、誰も俺とバーベキュー行ってくれへんのや。
(福田)そらそうやろ!やめさしてもらうわ。
(2人)ありがとうございました。

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