1. ネタ名と芸人名
- ネタ名:「結婚願望」
- 芸人名:りあるキッズ(長田融季・安田善紀)
2. 役割構造
- 古典型+感情型ツッコミ:長田が徹底的にツッコミを担うが、テンポ早めで時に感情が乗るタイプ。安田は一貫して天然ボケかつ脱線型の妄想展開。
3. 型(構造・スタイル)
- ストーリー展開型+ワールド構築型:冒頭の進路の話から、「理想の家庭」への妄想がどんどん構築される。後半はコント的展開に突入。
4. ネタスタイル(演技・テンポ・空気)
- ナチュラル会話型+演技・空気重視型:リアルなトーンから突如ボケに滑り込む安田と、それを即座に叩き潰す長田のリアルタイムな反応性。
5. 構成要素の流れ
- ツカミ:自己紹介→小5から漫才やってる→「チン毛」からの即ツッコミ
- 展開:「進学・就職」からの安田の暴走→公文式
- クライマックス:「理想の家庭」妄想→「葬式みたいな見送り」→「三びきのこぶた」崩壊
- オチ:「こんな僕って結婚できるかな?」→「できるか!やめさせてもらうわ」
6. 笑いの源泉
- ズラし:「結婚」に対する妄想がことごとく“死”を連想させる逆説
- 構造遊び:「三びきのこぶた」の童話構造に現代用語を混入し破綻させる
- 誇張・感情暴走:奥さんが隣人、坊主が出勤見送りに来る等、日常が拡大・崩壊
7. キャラのタイプと関係性
- 安田:理想を語るが的外れな“妄想暴走型ボケ”
- 長田:現実原理を代弁する“理知的ツッコミ”ながらも感情が乗ると暴走気味に
- 関係性は基本は固定型だが、安田が意図的に長田を置き去りにするため、ツッコミが追いかける構図に
8. 演技・パフォーマンス面
- 長田:声の張り・テンポ・ツッコミの間合いが絶妙。ツッコミ語尾の「ねん」の抜き加減が秀逸
- 安田:棒読みと間延びした語りが“天然さ”を強調。後半のすすり泣きや朗読の演技も意外に巧い
9. 客観的コメント
- 若干18歳にして「家庭」や「進路」など大人のテーマを扱いながら、終始“ズレ”によって笑いに変換する構造の見事さ。突拍子のなさが“若さゆえ”ではなく、構造的ギャグとして成立している。
10. 最終コメント
このネタの最大の魅力は、18歳という年齢に似つかわしくないほど成熟した構造と、若さ特有の暴走力が奇跡的に同居している点にある。安田の「理想の家庭」妄想は一見微笑ましいが、次第に葬式、坊主、専門学校のCMと破綻を極め、世界観が不条理に拡張していく。そのたびに長田は冷静なツッコミを入れるが、突拍子もない流れに巻き込まれ、ツッコミ自身もテンションが上がっていく。これは単なるボケとツッコミではなく、暴走する妄想を止める“理性”と、それに対して無力な“現実”との葛藤でもある。童話の崩壊や“玄関の見送り”といったビジュアル性の高いボケにより、観客の脳内に“異様な日常”が鮮明に浮かび上がる。このネタは、りあるキッズというユニットが持つ「若さ=勢い」だけではなく、構造的な美しさと巧妙なズラしがいかに精密に組み立てられているかを示す証拠だ。一方で終盤の失速とオチに工夫がなく、畳みかけがうまく機能していない点は残念。
【書き起こし】
長田:どうも~りあるキッズです、お願いします。僕ら小学校5年から漫才始めて今年で18歳なったんですよ。
安田:まあチン毛も生えてきてね。
長田:いらんこと言わんでええねん、遅いわお前。
安田:そうですか?
長田:当たり前やないか。
安田:高校3年なんでね、そろそろ進路で悩んでて。
長田:何を悩んでんねん。
安田:何がやねん。
長田:俺ら今からどんどん漫才していかなあかんのちゃうんかいな。
安田:いや~進学か就職かで迷ってるけどなあ。
長田:何を迷うねんな、これが立派な就職ちゃうの?
安田:だって僕の第1希望は大塚製薬。
長田:本気やないかい!お前ちょっと待て、本気で就職すんのかい。
安田:だからそれはできひんから進学しよかな思てん。
長田:学校との両立やったらできますからね。
安田:だから僕もこないだから本格的に塾へ通い始めてんで。
長田:予備校かなんか行ってんの?
安田:いや公文式。
長田:なんで公文やねん!間に合うか。
安田:今6の段やねん。
長田:なんで九九やねん、頭おかしいやろ。
安田:8やったかな。
長田:どうでもええねん、勝手にせえ。
長田:でも僕ら18なってこれからいろいろできるんですよ、車の免許取ったり夢がたくさんあるのよ。
安田:僕なんかそろそろ結婚したいね。
長田:お前何がしたいねん!結婚進学って…
安田:そろそろ家庭を持たないかんで。
長田:いくつやねんな、生えたてでしょ毛、できるか。ほんで言うとったるわ、お前が思うほど結婚なんて簡単なもんやないねん。
安田:だって僕は理想の家庭像いうのがもうあんねんで。
長田:そんなん考えてんの?
安田:やっぱ芸人やから人とは違ったもの、楽しい家庭を持っていきたい。
長田:やっぱ楽しいほうがいいですからね。
安田:そのためには生活の1コマ1コマを楽しくしていかな。
長田:例えばどういうことよ。
安田:例えば朝起こしてもらうときも「あなた起きて~」とか普通に起こしてもろたらあかん。
長田:どう起こしてもらうの?
安田:僕が朝寝てるときに布団の中にスッと入ってきて「あなた起きて~」。
長田:いや普通やん。
安田:隣の奥さんが言いよんねん。
長田:なんでやねんな!お前の嫁は?
安田:3人分の料理作ってんねん。
長田:理解してんのかい。
安田:奥さ~ん、スクランブルエッグでよろしい?
長田:確認せんでええねん。ほんなら聞くけど隣の旦那は何してんの?
安田:隣の旦那はカンカンや。
長田:やめさせろや!怒ってんやったら分かるやろ朝から。
安田:あと僕が朝出かけるときも普通に見送られたくないねん。
長田:どう見送ってもらうん?
安田:ティッシュ持った?ハンカチ持った?とかそんなんいらんねん。
長田:どうしてもらうの。
安田:僕が出かけたあとに嫁さんが玄関先に菊の花をそっと置くねん。
長田:いや手向けられとるやないかい、そういう見送りかい。
安田:(すすり泣き)ウチの主人がただいま出勤いたしました。
長田:当たり前や!出棺のときだけにしとけ。
安田:ほな隣の奥さんが「安田さん大丈夫?」
長田:まだおったんかい!
安田:ウチの嫁さんが坊主にお布施渡しよんねん。
長田:坊主も呼んでんの?大げさやわ。
安田:隣の奥さんが坊主に「ささ奥でお茶でもどうぞ」。
長田:お前関係ないやん。
安田:「私次ありますんで」。
長田:もうええわ!坊主帰れ!
安田:スクーター乗って帰りよる。
長田:知らんがな!
安田:前にガラスついてる。
長田:聞いてへん言うてんねん。
安田:ワ~って。
長田:ワ~やあるかい、何をしてんねんな?お前毎朝玄関で、おもろないわそんなもん。
安田:あと寝るときも普通に寝たら面白くないね。
長田:どう寝んのよ。
安田:僕なんか嫁さんに枕元で本読んでもらいたいねん。
長田:かわいいな、お前。
安田:「三びきのこぶた」や。
長田:めっちゃかわいいやん、寝てる横で読んでもらうんかいな。
安田:そうそう。「昔あるところに3匹の子豚とお母さん豚が暮らしていました」
長田:あっそうそうそうそう。
安田:「ある日お母さん豚は子豚たちにこう言いました。お前たちももう大きくなったんだから自分で家を建てて立派に暮らしなさい」
安田:「すると子豚たちはこう言いました。じゃあ僕はワラの家を作ろう。じゃあ僕は木の家だ。じゃあ僕は警察官になる」
長田:変わっとるやないかい!それ大原簿記専門学校のCM!
安田:するとお母さんも「じゃあ私はウェブデザイナー」
長田:やかましいわ!どこの豚が眼鏡かけとんねん。
安田:するとオオカミも♪オ~カミ オ~カミ
長田:♪お~はら お~はら
安田:♪本気になったらコ~ロギ
長田:しょぼーい!靴でキュキュキュキュじゃそんなもん、何の物語やねんそれ。
安田:あかんかいな。
長田:あかんかいちゃう。ほんでなお前、結局何が言いたいねん。
安田:こんな僕って結婚できるかな?
長田:できるか!やめさせてもらうわ。
